宮城の海で磯焼けが深刻化 コンクリートブロックで藻場復活プロジェクト

宮城の海の異変についてです。近年、温暖化の影響で大量発生したウニが海藻を食べつくす磯焼けの被害が深刻化しています。
生き物たちの餌やすみかとなる藻場を復活させるため、県の新たなプロジェクトが動き始めています。

港に並べられた、柱のような形をした特殊なコンクリートブロック。牡鹿半島に位置する石巻市の表浜では、磯焼けが進む藻場をコンクリートブロックを活用して復活させる、県内で初めてのプロジェクトが進められています。

コンクリートブロックで藻場を復活

コンクリートブロックで藻場を復活

海藻が生い茂り、魚や貝などのすみかになる藻場。近年、宮城の海では温暖化でウニが活発になり、餌である海藻を食べる量が増えたことや、栄養の豊富な親潮の勢いが弱まり海藻の成長が遅れたことで、磯焼けの被害が深刻化しています。
県漁協表浜支所木村千之運営委員長「ウニの開口、それとアワビの生育ですか、そういった所にですね、餌食べなければ大きくはならないし、ウニにしろ身入りが悪いし」

磯焼けが進む宮城の海

表浜漁港の周辺でも、コンブやアラメといった海藻の磯焼けが深刻化し、それらを餌とするウニやアワビが十分に育たないなど影響が出ています。
県によると、1995年に4111.5ヘクタールあった県内の藻場は、磯焼けの進行で2019年には867.7ヘクタールと5分の1に減少しています。

深刻化する磯焼けを食い止めるため、県が始めたのが藻場プロジェクトです。表浜漁港の近くにある天然の藻場を活用し、磯焼けが進む沖合に海藻や生き物のすみかを広げる作戦です。
東部地方振興事務所水産漁港部小野寺恵一統括技術次長「設置した藻場からですね、種が湾内に回りまして、他の海域についても藻場が増えていくというストーリーを描いています」

プロジェクトでは、それぞれが異なる役割を果たす3種類のコンクリートブロックを使います。
東部地方振興事務所水産漁港部小野寺恵一統括技術次長「まずですね、一番天然の藻場から手前に設置しますのが、阿波美プレートになります。このプレートの中にアミノ酸が入っておりまして、海藻の種が着きやすいという形になっています」

3種類のコンクリートブロック

阿波美プレートは、中にアミノ酸の一種アルギニンが混ぜ込まれていて、天然の藻場と新しい藻場をつなぐ役割を果たします。
阿波美プレートは食品メーカーの味の素が開発に協力していて、海中でアミノ酸がゆっくりと溶け出すことで、小さな海藻の栄養分となり成長を促します。
阿波美プレートは、徳島県の漁港で2017年2月に全国で初めて導入されました。アミノ酸の効果で、ブロックの表面に海藻が生えアワビの餌場となることが確認されています。

阿波美プレートの隣に設置されるのが柱の形をしたコンクリート、柱状礁です。柱状礁は、天然の藻場から流れてきた海藻の種が付着して成長。コンブやアラメなどの大きな海藻になります。育った海藻が海域全体に種子を飛ばし、藻場拡大の拠点となります。
2018年には、海藻が生えていなかった北海道の積丹半島海域に柱状礁が設置され、2年後に柱に沿って生い茂るホソメコンブの姿が確認されています。2022年までに約87.8キロのホソメコンブが育ちました。

柱状礁にはこんな役割も。
東部地方振興事務所水産漁港部小野寺恵一統括技術次長「(海藻を食い尽くす)ウニは、海藻がゆらゆら揺れる所にはなかなか寄り付けない特性がありますので、こういう縦長のブロックを入れております」

北海道・積丹半島沖で成果

そして、最後に設置されるのがカキの貝殻が詰まったブロック、シェルナースです。
東部地方振興事務所水産漁港部小野寺恵一統括技術次長「パイプの中に貝殻がありまして、海藻の根が付きやすくなったり、小魚類の餌となる動物プランクトンを沸かすという機能があります」

海藻の生育場になるだけでなく、カキの殻から動物性のプランクトンが発生することで魚の餌場にもなり、さまざまな生き物を呼び込むことができます。
東部地方振興事務所水産漁港部小野寺恵一統括技術次長「それぞれ機能を持ったブロックを組み合わせながら、全体的に藻場を増やしていくという形になっております」

失われた藻場の復活へ。コンクリートブロックは、現在、表浜の漁港で組み立てなどの準備が行われていて、海に設置されるのは7月上旬の予定です。2029年度までに1770ヘクタールの藻場の再生を目指します。
県漁協表浜支所木村千之運営委員長「藻類が生える、草類が生える。そうしたことによって豊かな海ができると小さな魚も入れるということで、非常に期待はしていますね。孫の代まで海を大事にしていきたいなと思います」

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