中学に自販機で賛否 脱水予防で歓迎、お金のトラブル懸念 設置後に撤去も

関係者で十分に協議が進められないまま校内に設置された自動販売機。現在は撤去されている(2日、守山市荒見町・守山北中)

 本格的な夏の到来を前に、滋賀県守山市内の市立4中学校で自動販売機の導入が検討されている。保護者からは脱水予防や水分補給の面で歓迎の声が上がる一方、現金の管理方法や生徒同士の貸し借りなど「トラブルの種」になり得るとの懸念も。十分に協議が進められないまま一部の学校に設置され、ほどなく撤去されるなど混迷が深まっている。

 自販機の設置は市とコカ・コーラボトラーズジャパンが締結した協定に基づく。災害時に飲料が無償提供される「災害対応型自動販売機」で、1日現在で市内の公園や地区公民館など21カ所に設置されている。今回は4中学校が災害時の避難場所などに指定されていることや、生徒の熱中症対策の一環として、同社から設置の提案があった。

 正式な通知はまだだが、生徒の保護者の受け止めはさまざまだ。40代女性は「水筒を持っていくのを忘れる時があり、学校で飲み物を買えるのはありがたい。『休み時間にジュースOK』となれば、学校に行く楽しみが増えて良いと思う」と好意的だ。

 一方、50代男性によると、子どもが通う学校では水筒の中身が空になると先生からペットボトル飲料をもらって後日返却するという運用になっているといい、「これまでのルールで何の問題もない。おごったりおごられたりがエスカレートしていじめにつながるかも知れないし、家庭の経済的な理由で飲み物を買えない生徒もいるだろう」と危惧する。

 市学校教育課や協定を所管する危機管理課によると、担当者間で情報共有せずに話が進み、協定書に設置場所として明記されないまま5月上旬に守山北中に1台置かれた。だが、保護者らの声を受けて6月上旬に一度も稼働することなく撤去された。

 学校関係者は「商品のラインナップが事前に想定していたものとは違っていた」と明かす。断片的な情報が交錯し、不信感を抱く保護者も多いという。

 他の自治体では大阪府藤井寺市の市立2中学校で昨夏に学校側からの要望で自販機が設置され、好評という。守山市でも生徒会を中心に利用に当たってのルール作りを行っている最中だ。保護者や全校生徒に対しての正式な通知はこれからで、担当者は「段取りが悪く、うまく連携が取れていなかった。丁寧に説明を尽くしたい」としている。

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