第12回 婦人科で知っておきたい10のこと

女性のがん患者に寄り添うジャパニーズ・シェアがお届けする連載。アメリカで暮らす女性に役立つ最新医療情報を発信する。


Japanese SHAREの臨床アドバイザーで婦人科腫瘍専門医の鈴木幸雄です。今回は、よくご質問をいただく女性の健康問題や病気について、簡単にご説明したいと思います。

①生理痛は我慢すべき?

日常生活に支障が出るほどの症状なら改善を図るべきです。我慢してしまう人も多いですが、痛みを改善する方法はたくさんあります。実は子宮や卵巣に病気が隠れている可能性もあるので、症状がひどい方は産婦人科に相談を!

②子宮筋腫は怖い病気?

女性の2~3人に1人は子宮筋腫があります。子宮は筋肉でできており、子宮筋腫は筋肉の良性腫瘍で、コブのようなイメージです。できる場所や大きさによって、経血が増えたり、生理痛がひどくなったり、妊娠しにくくなったりします。ちなみによく聞かれますが、基本的にがんにはなりません。

③子宮は老化する?

子宮自体はほとんど老化しません。更年期に閉経するのは、卵巣の機能が落ちる(老化する)からです。

④卵巣のう腫は要手術?

卵巣のう腫とは、卵巣にできる良性の腫瘍のことを指しますが、がんになる可能性のあるタイプ(チョコレートのう腫、粘液性のう腫、成熟奇形腫)もあるので注意が必要です。もしそのタイプと診断された場合は、無症状でも大きさの変化を観察し、4〜6センチを超える場合には手術という選択肢も考えられます。チョコレートのう腫は手術以外の治療法(ホルモン剤など)もあり、定期的な受診が必要です。奇形腫は高齢の方以外はがんの心配はほとんどありません。

⑤チョコレートのう腫があると妊娠しにくい?

チョコレートのう腫は、卵巣の中や卵巣の表面で月経が起こってしまう病気です。そのため毎月の月経による炎症で子宮や卵管、大腸など周りの臓器に癒着してしまい、不妊になる可能性が高まります。こちらも診断された場合には定期的な受診が必要です。

⑥30代なのに更年期の症状が……。

更年期とは50歳前後の10年くらいの時期を指します。30代で更年期のような症状を自覚されている方は、他に原因がある可能性があります。症状がつらくなる場合は受診を!

⑦がん検診っていつ、何を受ければいいの?

女性特有のがんで有効性が確立されているものは、乳がん検診(マンモグラフィー)と子宮頸がん検診(細胞診、HPVテスト)のみです。子宮体がんや卵巣がんは、早期発見するための有効な検査がありません。閉経後の不正出血で気付く子宮体がんは、ほとんどが早期です。卵巣がんについては残念ながら決まった方法がありません。

⑧日本で子宮頸がんが増えているって本当?

日本での全体数はこの数十年変わっていませんが、40歳以下の患者が増えています。予防には「子供たちへのHPVワクチン」と「大人へのがん検診」の2本立てが重要です。

⑨腫瘍マーカーが高いと言われましたが……。

腫瘍マーカーは、がんになっていることを直接意味しているものではありません。名前から誤解されがちですが、何十種類、それ以上の腫瘍マーカーが存在しますので、数値が高いと言われても怖がらず、きちんと説明を受けましょう。

⑩がん家系かも……。

2人に1人ががんにかかる時代ですので家族や親戚にいても当然と言えます。「遺伝的ながん家系」はまた話が違い、特定の遺伝子に異常があることで、特定のがんになりやすい状態になります。遺伝が関係しているがんもありますので、専門的な外来などでの問診や血液検査で家系やリスクについて知ることもできます。

これだけでは、疑問が全て解消できたとは言えないかとは思いますが、少しでもきっかけになれば幸いです。また重要なものは次の機会に解説しようと思います。

今週の執筆者

鈴木 幸雄
婦人科腫瘍専門医

医学博士、産婦人科専門医・指導医、女性ヘルスケア専門医。
Japanese SHARE臨床アドバイザー。これまで多くの子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん患者における手術、化学療法を担当。
現在は、コロンビア大学産婦人科・婦人科腫瘍部門の博士研究員。
sharejp.org/dryukiosuzuki

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6月25日(土)
午後8時〜9時30分開催!

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時間や参加方法などの詳細は、下記のURLかQRコードをチェックしよう。

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