「無力じゃない」 露の侵攻に感じる使命 高校生平和大使 神浦はるさん(17) 届け「ナガサキの声」 核禁会議直前インタビュー<中>

「世界に核兵器の非人道性や悲惨さを訴えたい」と語る神浦さん=佐世保市内

 父の仕事の関係で、小学6年から中学2年までロシア・モスクワで暮らした。今も思い出す光景がある。地下鉄で屈強な男の人たちが一斉に立ち上がり、子どもに席を譲っていた。「優しい人たちばかり」。それがロシアの印象。
 もしかしたら、あの人たちも戦争に巻き込まれているのだろうか。ロシアにはウクライナにルーツがある友人もいた。ロシアのトップの口から飛び出す核の脅し。「悲しい」「衝撃」…。うまく表現できない思いが渦巻く。
 ロシアの侵攻が続く中で開催される核兵器禁止条約第1回締約国会議。高校生平和大使の代表として現地に派遣される青雲高3年、神浦はるさん(17)=長崎県佐世保市=は、運命的なものを感じている。
 現地では、約30カ国の若者らが議論・交流するオリエンテーションや、非政府組織(NGO)核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の「市民社会フォーラム」などに参加し、長崎の思いを発信する予定だ。「国際社会の中で核兵器廃絶運動は風前のともしび。広島長崎の若者が意思表示し、もう一度世論を作り直す役割を果たしてほしい」。高校生平和大使派遣委員会の平野伸人共同代表(75)は思いを託す。
 核兵器廃絶を求める署名をスイス・ジュネーブの国連欧州本部に届ける高校生平和大使。被爆地の若者たちの「微力」が積み重なって広がり、今年活動開始から25年の節目を迎える。2014年、メキシコで開かれた第2回「核兵器の非人道性に関する国際会議」には、大使で被爆3世の小柳雅樹さん=当時(16)=が参加し、各国政府代表らに英語でスピーチ。反響を呼んだ。
 原爆投下から77年。被爆者は高齢化し、直接体験や思いを伝えることが難しくなってきている。だからこそ、こう思う。被爆者から直接話を聞ける「最後の世代」として、世界に核兵器の非人道性や悲惨さを訴えたい。
 16日、長崎空港であった出発式で五島市在住の藤原良子さんが折った千羽鶴約5千羽などを受け取った。
 歴代平和大使の思いも込めたスピーチは用意している。「核兵器にびくびくとおびえて生まれた平穏は平和とは呼べない」「核兵器を廃絶することこそが、世界を平和にする最大の近道であると信じています」。うまく話せるだろうか。でも必ず伝えたい。それが平和大使の使命だと信じる。


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