Cine Gearに異業種から初参戦
「Cine Gear Expo 2022」がロサンゼルス・コンベンションセンターで6月8日より4日間開催された。Cine Gear Expoは、本来映画業界関係者向けで、業界のニーズに特化した展示会だ。映画業界関係者の参加のみだったが、近年では時代の流れに合わせ、エンターテインメント、VR、メタバース、デジタルメディア、政府・軍事関係者、スポーツ、ライブイベント関係者も足を運ぶようになっている。そんな筆者も異業種の人間の一人だ。
今回、縁があり参加することになった。昨年からパラマウントスタジオから会場をコンベンションセンターに移行し、2回目の開催となる。果たして、パンデミック収束後初のCine Gear Expoはどうだったのか?早速見ていこう。
到着:近くて遠いコンベンションセンター
Cine Gear Expoと同じ建物で米州首脳会議が開催されているため、コンベンションセンターへのアクセスは非常に大変だった。多くの道路が封鎖され、府関係者の安全を見守るためにたくさんの警備員や警察官が立っていた。
多くの封鎖された道路をジグザグに進み、ようやく駐車場に到着すると、警備員が厳戒態勢で私を出迎えた。「何のために来たのか」と尋ねられ、「Cine Gear Expoのため」と答えると、警備員にトランクをチェックするように言われた。他の入場者も同様にチェックされているのが分かったので、これがこの日の通常の手順のようだった。
駐車場の係員が、ディズニーランドの駐車場と同じような感じで方向を指さしながら駐車場へ案内してくれた。駐車場はとても分かりやすく、幸運にも巨大なコンベンションセンターの入り口にかなり近いところにスペースを見つけることができた。
いざ展示会場へ
Covld-19の検査は15分間で済み、陰性であることが確認された後、登録バッジを受け取ると展示会場に向かう。するとすぐに、このイベントの詳細に関する巨大な情報バナーが目に飛び込んできた。
ガラス張りのドアを通り抜けると、そこは天井が高く、垂木を上部に配した巨大なコンベンションホールだった。例年ほど多くのベンダーや出展者を集めていないようなイベントにしては、とても大きなスペースだ。このホールは今年のイベントの規模にしてはかなり広かった。
パンデミックの影響は、屋内イベントにも及んでいるようだ。来場者数はそれほど多くはなかったが、飽きさせない工夫が随所に施され、出展者たちは忙しく動き回っていた。ただ、以前の通りスタジオで開催した方が、より楽しくて面白い体験ができたのはいうまでもないだろう。
カメラや映画制作のプロセスに関する基本的な初心者知識を持ってCine Gear Expoに臨んだ。それでは、さっそく各社ブースを紹介していこう。
会場から、各ブース紹介
ARRI
今回Cine Gear Expo全体の目玉はやはり「ALEXA 35」だ。新開発の4.6Kスーパー35mmセンサーを搭載し、解像度Over 4Kを実現し、17ストップのダイナミックレンジと、さらに最新のカラーサイエンス技術"Reveal Color Science"や多彩なフィルムストックで表現できるARRI Textureなどを搭載した、シネマトグラファー待望のシネマカメラとなった。予想通り多くの人がRRIブースに詰めかけた。
Aputure
新製品であるチューブライト「MT Pro」の全長は約30cm。36個のLEDピクセルを搭載し、高ピクセル密度を誇る。Sidus-linkで制御可能、ワイヤレスDMX実装、内蔵バッテリーで100分の電源供給が可能だ。
Blackmagic Design
Canon
Carl Zeiss
Carl Zeissブースは、オープンな佇まいで各種レンズラインナップが試すことができるが、常時順番待ちという人気ぶりだ。
Frame.io
Adobeの一員となったFrame.ioも引き続きCine Gear Expoに参加。映画業界もこれからクラウド必至の時流に…。Camera to Cloudの時代へ。最新の各種カメラが見えるのも嬉しいところ。
RED KOMODOに後部装着Teradek Serv 4Kに注目。Frame.ioのクラウドに自動的にアップロードや4Kストリーミング可能なスグレモノ。さらにServ Microも発表されTeradek(CS)で展示された。
FUJIFILM
Panasonic
Sony
Creative Solutions
Cine Gear Expoに参加して
シネマの機材や技術に一気に触れられる充実した一日になった。この世界に足を踏み入れるまで、筆者はあまり知らなかった。今、これらのプロジェクトを組み立てるクリエイターや技術者たちにさらなる理解と尊敬の念を抱き、映画制作の世界に足を踏み入れたいとさえ思うようになった。
しかし、これらの素晴らしい機材を使用するには、当然多くの費用がかかることは言うまでもない。さすがにこの業界にはレンタル事業者が多いこともあり、会場全体を見渡すと機材のレンタルブースが目立ったのも印象的だった。
この業界の大きな動きは、ハードからソフトまでのワイヤレス技術そしてその先のクラウドにあるようだ。ワイヤレスモニター、ワイヤレス通信、ワイヤレスファイルハンドリング、ワイヤレスクラウド管理など、誰もがワイヤやケーブルが邪魔されない世界を望んでいる。撮影しようとすると邪魔になるし、つまずいたり転んだりすることもある。ケーブルマネジメントは、この業界が熱心に解決しようとしている大きな問題なのだろう。
ALEXA 35をはじめとするカメラ以外に、会場で人気があったのはTeradek、Frame.io社の製品だ。オリジナルのフィルムストックキャプチャの時代は終わり、完全にデジタルビデオキャプチャに移行していることが分かる。フィルムキャプチャカメラの技術を進化させたものはなく、クラシックやビンテージのフィルムキャプチャカメラは一つも見かけなかった。
モーター駆動のプッシュカート、ケーブルマネジメントのためのガジェットなど、制作現場でのロジスティック技術における小さな革新や発明が存在し、この巨大市場には独自に参入する余地がある。すべてのブースが100万ドルの資金を持つ巨大なコーポレート企業ではなく、スタートアップの小さな企業が果敢に挑戦していることは新鮮だった。
実は、カメラやレンズの市場をすでに掌握したような巨大企業よりも、小さなイノベーションで前進し、自ら道を切り開いている中小企業の方に興味をそそられた。DJIはすでにドローン撮影技術で巨大企業となっているが、リリースする製品はイノベイティブなものばかりだ。DJI Ronin 4Dジンバルのセットアップを紹介したが、非常にコンパクトなセットアップが手頃な価格で提供されていることにはかなり感銘を受けた。
Frame.ioはついつい長居をしてしまった。非常にインタラクティブなソリューションだ。営業担当者から製品開発者を紹介され、その開発者がFrame.ioのデモをしながらプロセスを丁寧に説明してくれたのが印象的だった。Frame.ioブースは常に混雑しており、どうやらクラウドベースのプロセスが業界でも求められていることは自明だ。大容量のファイルをクラウド上で簡単に素早く制作チーム全員でコラボレーションするスタイルは、これからは当たり前になるのだろう。
筆者は一般参加者として、多くのことを学ぶことができた。また、他のシネマや映像関連の展示会についても調べてみたいと思う。パンデミックやサミットがあったにもかかわらず、全体的に素晴らしい経験だった。Cine Gear Expo 2023も参加しようと思う。
L.A.を拠点に、アートディレクションとブランディングの分野で10年以上の経験を持つクリエイティブのプロ。技術や音楽を趣味としており、アーティスト育成やスタートアップ文化の個人的なプロジェクトにも取り組んでいる。東京が好きで良く来日している。いつか移住したいと願っている。