ツバメの営巣、親子3代で見守り 神奈川・真鶴町の干物店 日本野鳥の会が感謝状 祖父の代からの教え今も

日本野鳥の会神奈川支部の高島さん(右)から感謝状を贈られた「髙橋水産」の髙橋3代目店主。倉庫の天井の約30カ所にツバメの巣の形跡が見られる=14日、真鶴町真鶴

 神奈川県真鶴町の漁港近くに、親子3代でツバメを見守り続ける干物店がある。毎年初夏にかけて10カ所以上の巣でひなを育てる様子が見られるが、今年はカラスに襲われて大半の巣が落下した。日本野鳥の会は14日、「多数の巣を大切にしてきた」と同店に感謝状を贈呈。今後は同会と協力し、ツバメがさらに安心して暮らせる環境をつくろうとしている。

 カラスなどの外敵から身を守るため、人間の出入りがある場所を好んで巣を作るツバメ。古くから「縁起がいい、商売繁盛する」と言い伝えられている。

 昭和から半世紀以上続く「髙橋水産」(同町真鶴)。真鶴港が見渡せる吹き抜け倉庫の天井には、ツバメの巣が作られた形跡が約30カ所も残されている。3代目店主で“ひもの仙人”と呼ばれる髙橋敏之さん(44)は「自分が生まれる前からツバメの巣はあったはず。創業した祖父の代から、何があっても巣を壊したりしないように教えられていた」と回想する。

 日本野鳥の会神奈川支部によると、同店を拠点にしているのは年間国内にとどまる小さめの「ヒメアマツバメ」。羽毛や枯れ草などで巣を作り、繁殖期以外も巣をねぐらとしている。

 昨年は150羽ほどが身を寄せていたといい、髙橋さんは「ふんの掃除などが大変だが、毎年のようにツバメの集団が訪れてにぎやか」と笑みを浮かべる。

 同支部では、鳥類の基礎資料を作るべく、2009年から県内116カ所で野鳥調査を実施。真鶴の調査班11人は毎月、駅や公園、海岸など6キロの距離を探索し、17年には約50種1900個体ほどの野鳥を確認したという。髙橋水産では調査開始時から毎年ツバメが確認されてきたことから、本年度県内で唯一感謝状が贈られた。

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