「PTAは改革が最も遅れている組織」 京都・同志社大教授に聞く問題点

「PTAは個人の自由を尊重する組織になるべき」と話す同志社大の太田教授(京都市上京区・同大学)

 PTAは近年、入会の強制性や重い負担を指摘する声が強まり、時代に合った在り方が各地で模索されている。京都市では市PTA連絡協議会が全国組織からの脱退を検討する動きも起き、東京都小学校PTA協議会は来年3月末に脱会する方向で手続きを進めることを賛成多数で了承した。PTAの上部団体との関係などについて同志社大政策学部の太田肇教授(組織論)に聞いた。

 ―京都市PTA連絡協議会(市P連)が、日本PTA全国協議会(日P)からの退会を検討した。

 「(上から指示する)トップダウン型の体制が制度疲労している、ということだろう。本来、PTAは保護者が主権者で、意見を下から吸い上げて活動するボトムアップ型の組織。企業や役所はトップダウン型だが、同じようにPTAも上部団体が上意下達の仕組みで動かしている。戦後何もない時はそうせざるを得なかったかもしれないが、見直す機会がなくずるずるときていた。今回そこに一石を投じた意義は大きい」

 ―日Pは全国大会を各都市で持ち回り開催し、地元PTAの金銭や人員負担の重さが指摘されている。国への要望活動なども会員の承諾なしに行っていたともされる。

 「大規模な全国大会を毎年、各都市に引き受けさせていることに無理がある。学校単位のPTA(単P)の役員選任も同じだが、順番に割り当てることが平等とされるが、適切かは疑問だ。日Pの要望活動も、白紙委任は問題だ。手続きをはっきりと決めておく必要がある。旧態依然とした考え方は見直すべきだろう」

 ―日Pからの退会は市P連会長の提案だったが、理事40人による投票の結果、反対多数で否決された。

 「多くの役員は任期が1年間のため何事もなく、事を荒立てずやり過ごしがちだ。そのため上部団体との関係や運営の在り方がおかしいと思っても見直されず、課題が残されてきた。今回の件も、組織の中で意見を言っても抑えられるので、単Pや保護者の意見を聞くなどし、世論を味方につけて進めていれば、結果は変わったかもしれない。今回の問題提起をきっかけに草の根から盛り上げる有志が出たり、オピニオンリーダーが先導したり、地方議員が争点化したりしてもいいと思う」

■別の上部団体を新設してもいいのでは

 ―日Pは国への要望など一定の役割を果たしているとの評価もある。上部団体との関係を変えるにはどうしたらいいか。

 「PTAは組織の維持や学校のサポートなど役務的な役割と、子どものために意見を出したり交流したりする役割という、性格の異なる役割を一緒に担っているのが問題。だから後者を希望する人も前者の役割に取り込まれる。日本の組織は、中から変えることは難しいので、日Pは国への要望などを行う機関として残しつつ切り離し、子どものために連携が必要なら別のボトムアップ型の上部団体を新設してもいいのでは」

 ―これからのPTA運営の在り方は。

 「日本の組織で、最も改革が遅れているのがPTAと町内会だ。今や共働きが普通なのに、専業主婦が前提の体制になっている。欧米など海外の保護者組織を調べたことがあるが、基本はボランティアで、日本のような役員就任の強制はなく、自発的に学校と子どもの関係を改善する組織だった。日本のPTAも、趣旨を明確にし、それに基づき活動を判断することが大事だ。その際は『自由参加』『強制は最少』『選択できること』がポイントだ」

 ―PTA問題の根本には何があるのか。

 「組織と個人の利害は対立するということを、前提にしていないから問題が起きる。日本は『全社一丸となって』などとよく言われるが、個人が自分の権利を主張しないのをいいことに組織が都合良く運営されてきた。物を言わない個人を前提にされるから、PTAや町内会が維持されてきた。個人の本音と懸け離れたところで組織が運営されてきたので、ひずみや不満が出ている。PTAも、仕事や介護など理由がないと役員などを免除されないのはおかしい。最終的には個人の自由だということをもっとみんなで共有する必要があると思う」

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