「タイヤを付け間違えた」「違う性格の人と会話してる?」「これを活かせば絶対勝てる」【SF Mix Voices 第5戦決勝】

 今季、全日本スーパーフォーミュラ選手権のセッション後に設けられている“メディア・ミックスゾーン”。全ドライバーが1箇所に集まり同時にメディア対応を行うという、F1やWECなど海外レースではおなじみの取り組みだ。この記事ではそこで聞けたドライバーたちの“声”を、可能な限りお伝えする。

 6月19日、第5戦SUGOの決勝を終え、ミックスゾーンに姿を現したドライバーたちのコメントをお届けしよう。

 なお、いわゆる“ステイアウト組”での最上位となる4位に入った牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)と、ブレーキトラブルからクラッシュ、リタイアを喫した松下信治(B-Max Racing Team)は、決勝後のミックスゾーンを欠席している。

■福住仁嶺(ThreeBond Drago CORSE) 決勝8位

 予選ではQ2突破を果たし、6番グリッドを確保していた福住。決勝ではミニマム周回数でピットインした。

「終始、ペースとしてはあまり良くない状況で、スタート位置が良かったことで、ある程度前の方で走れたという感じでした」

「中盤は、前の大津(弘樹)選手とかにも離されずについていける瞬間があったのですが、後半になって気温が下がってきたときに、僕のペースを上げることができず、そこで一気に前と離され、後ろからも追い上げられてしまいました」

「結果的に8位でポイントは獲得できましたが、まだまだ追い上げられるような状況ではないので、そこを改善していきたいです」

 前戦のオートポリスでは、決勝を走るなかでセットアップのヒントを見つけていたThreeBond Drago CORSE陣営。「オートポリスで見つけたものからいろいろ変えてきていることが、今回の結果につながったと思う」という福住は、「次に向けてはもっと細かいところまで、やっていきたいと思います」と意欲を見せた。

■笹原右京(TEAM MUGEN) 決勝10位

 チームメイトのディフェンディング王者、野尻智紀がランキングトップをひた走る一方、シーズン序盤の活躍からすると“やや失速気味”に映る笹原右京。SUGOは14番手スタートから、いくつかの印象的なオーバーテイクは見せたものの、10位という結果に終わった。

「野尻さんはいつもどおりな雰囲気で調子良く上がってきているようですが、僕は走り始めから対照的で、なんかいままでの手応えというか、いままでにあった“ベース”が急激になくなったような感じで、『あれ、違う性格の人と会話してる?』みたいな感じになってしまって」

「結論から言うと、タイヤをうまく機能させられず、予選でもグリップを全然引き出せないなか、すごい低次元で走ることしかできず、普通にミスなくいってあのタイムしか出なかったんです」

「日曜日の朝も苦戦していて迷路にはまり込んでいた感じでしたが、決勝直前のウォームアップで『これかな?』と思う部分があり、そこを詰めていったらいつもの雰囲気が2割くらい戻りました。それで、レースは結構力強く戦える手応えは得ました」

 決勝ではスタートやピットストップでギヤが入りづらいという症状に悩まされたが、笹原はコース上でそれを取り返した。

「コース上でポジションアップして落ちた分を回収していくことができたので、そのあたりは、コース上でやれることはやりきったな、という感じです」

「タイヤのこととかも一切考えずに、とにかくチャンスがあったらOT(オーバーテイクシステム)とタイヤを酷使してでも前の車をとにかく抜くっていうことしか考えていなかった。それが功を奏して前には行けたんですが、(フレッシュタイヤの)平川選手が後ろから来たときは全然次元が違いました。厳しかったですが、それは承知の上で攻めていっていたので……」

「今週末まるっきりダメだった部分が、最後の最後になって手応えというか手がかりが見つかった。そういう意味では、ポジティブと言えばポジティブですね」

2022スーパーフォーミュラ第5戦SUGO 笹原右京(TEAM MUGEN)

■佐藤蓮(TEAM GOH) 決勝16位

 10番手スタートだった佐藤。SC中に迎えたミニマム周回数、前方を走る同一チーム内でピット作業を行いロスが生じる車両がありそうだったことから、急きょこのタイミングでのピッインを行ったという。

 しかしロングスティントとなった後半はタイヤが厳しくなり、平川亮とポジションを争うなか、1コーナーでスピンを喫してしまった。

「最後はタイヤがズルズルで、2秒も3秒も違うような状況で、あのまま規定の周回数(53周)をそのまま走っていたらもっと順位を落とすような結果だったと思うので、ステイアウトした方が結果論で言えば正解だったと思います。ただ、その(10周目の)時点で状況判断をするのがいかに難しいかを、今回思い知りました」

「クリーンエアの状態で走れたらちょっと展開は変わったのかなと思うので、そこはちょっと残念な部分ではありますね」

2022スーパーフォーミュラ第5戦SUGO 佐藤蓮(TEAM GOH)

■宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S) 決勝6位

 SCで迎えたミニマム周回数でピットインせず、ステイアウトを選択。以降、暫定トップを走り、後方を走るピットイン組完了組との『見えない戦い』を宮田は続けた。

「OTSも使ったし、40秒ギャップを作ればトップになれるというのは分かっていました。1周で1秒、もっと稼いだときもあったので、とにかくプッシュしていました」という。

「僕の中では、プッシュしても牧野選手や平川選手が、ずっと僕の真後ろにいるという予想でしたが、2周走ったら後ろがどんどん離れたので、これは自分が速いと思いました。その後は常にサッシャのラップタイムを聞いて、1周で1秒から1秒ちょっと速かったので、時間レースになってしまいましたが、残り5周くらいまで引っ張って(サッシャとの差が)30~35秒くらいまでいけば、レース内容としては良いかなと思って、ずっと走っていました」

 しかし、最後に飛び込んだピットで、作業にロスが生じてしまう。

「タイヤを置く際にクルマに重なってしまって、それを平置きにするのに時間がかかってしまいました。それで出るのが遅れてしまいました。そこのロスでマージンが全部水の泡になってしまいました。あれがなければ、牧野選手より前だったし、最終的に2番手まで行けたと思います」

「ただ、そこは別に責めるつもりはないですし、また再発しなければいい、と思っています」

「僕の中では、(ピットアウト後に)残り6~7周は走れると思っていなかったので、タイヤ交換をして、また追い上げようと切り替えたんですけど、(タイムレースになったことで)まさか2周しかなかったので、そこは予想外です」

「いい内容もあったし、課題というか反省点を得られたという点では、僕もチームもまだまだ成長できる証なので、これからも努力し続けて、優勝できるように頑張りたいと思います」

「決勝が課題でした。自分のドライビングに対してタイヤとクルマが一致していなくて、すごく悩んでいたんですけど、どんどん改善していって、今回の決勝もペースが一番良かったので、そういう意味では自分も得られたものが大きかったです。これを活かせば、絶対に勝てるなというレースでした」

2022スーパーフォーミュラ第5戦SUGO 宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)
2022スーパーフォーミュラ第5戦SUGO 福住仁嶺(ThreeBond Drago CORSE)
2022スーパーフォーミュラ第5戦SUGO 山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)

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