【日本の美しい禁足地vol.6】太古から続く自然の息吹を感じる~石川県・氣多大社「入らずの森」〜

歴史や宗教的な背景などで立ち入ってはいけない場所。それが「禁足地」です。今回は、能登国一之宮・氣多大社の「入らずの森」をクローズアップ。400年以上も前から、神官以外は立ち入りできない聖域として守られてきた、この森が禁足地になった歴史、そして現在についてご紹介します。

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「入らずの森(いらずのもり)」とは?

石川県羽咋市寺家町に鎮座する「氣多大社」。境内は約3万3,000平方メートルの原始林の中にあり、この原生林は「入らずの森(いらずのもり)」として、古代から人の入れない神聖な禁足地とされています。

この森は、椎、たぶ、椿、やぶ肉桂などの常緑闊葉樹の巨木に覆われ、太古のままの自然が残っているため、国の天然記念物に指定されてます。

なぜ禁足地になったのか?

祭神の大己貴命は、300余の神を率いて出雲から舟で能登に入り、化鳥・大蛇を退治して海路を開拓。のちに守護神としてこの地に鎮まったとされています。

そのため、奥宮が鎮座する社叢(鎮守の森)は、「入らずの森」と呼ばれる聖域に。

また、『万葉集』には、748年に越中国司として赴任した大伴家持が参詣したときの歌が載っています。そのことからも、氣多大社が古くから北陸の大社として知られ、中世から近世にかけて、歴代の領主に手厚く保護されていたことをうかがい知れます。

近年で立ち入りを許されたのは昭和天皇だけ!

400年以上も前から、神官以外は立ち入りできない聖域として守られてきた「入らずの森」。神官でも神事を執り行う大晦日のみしか、立ち入ることができません。その際、目かくしするなど、厳重な祭式に従う必要があるとか。

近年、神職や森の管理を行う者以外に立ち入りを許されたのは、昭和天皇だけです。昭和58年、能登への行幸の際、この森に足を踏み入れた昭和天皇は、「斧入らぬ みやしろの森 めずらかに からたちばなの 生ふるを見たり」という御製(和歌のこと)を詠まれたそうです。

2019年12月に一般参詣者に公開されて、大きな話題に

そんな神秘のベールに包まれた森が、2019年12月、祭事「気の葉祭」の一環として、1カ月間限定で一般参詣者に公開され、大きな話題を呼びました。これに続き、2020年12月から3カ月間一般公開。約110m森の中を歩けることに。

予約した上で、正装して祈願料を納めれば、誰でも禁足地に入ることができたのです。

しかし、2021年はコロナ禍の影響で一般公開はされていません。果たして2022年は一般公開されるのか、気になるところですね。

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