壱岐で避難民支援 ウクライナ出身・小野ヤーナさん 地球規模での核廃絶 期待

夫の一馬さんとともに避難民の支援に励むヤーナさん(左)=壱岐市内

 核兵器の使用を示唆するロシアによるウクライナ侵攻が続く中、核兵器禁止条約第1回締約国会議が21日にオーストリア・ウィーンで始まる。ウクライナ出身で避難民の支援に取り組む長崎県壱岐市在住、小野ヤーナさん(39)は「核兵器を使えば世界の終わりになる」と警鐘を鳴らす。

 古里はがれきの下に埋もれた。母国にとどまる親戚たちの安否を確認するため毎日連絡を取るヤーナさんのもとに、こんなメッセージが届いた。「きょうも朝が来て、太陽を見ることができたよ。うれしい」
 地元ハリコフはウクライナ東部に位置する。兄弟国と言われたロシアまでは車で約1時間。町を歩けば半分がロシア人というほど、買い物などで国境を越える人が多かった。今年2月、ロシアが侵攻するというニュースが飛び込んできた時も、現地の反応は「まさかハリコフには来ないだろう」「来てもすぐ帰るのでは」というものだったという。
 だが、“隣人”は突然武器を携えて現れた。ヤーナさんの親戚によると夜明けに戦車のごう音が響き、その後住宅への爆撃が始まった。古里の人々は着の身着のまま避難を迫られた。
 遠く離れた壱岐で、言葉にならない不安が胸に渦巻いたヤーナさんだったが、すぐに夫の一馬さん(36)とともに避難民の支援に乗り出した。ヤーナさんが来日希望者を募り、一馬さんが国内の自治体と調整。これまでに26人の受け入れを実現した。
 避難民のために週2回オンラインで日本語教室を開き、就労・就学支援に奔走する慌ただしい日々を過ごしている。「母国を思い心細くならないか」との質問に「支援で精いっぱい」とほほ笑むほどに。
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 ヤーナさんを恐怖させたのはロシアによるザポロジエ原発への攻撃だった。ウクライナでは1986年、チェルノブイリ原発事故が発生。国民は放射線の恐ろしさを痛い程知っていた。核使用も示唆するロシアに、ヤーナさんはため息をつく。「チョルノービリ(チェルノブイリ)を見たら分かる。(核を使えば)ロシアもダメージを受ける。世界も危ない。ばからしい」
 核兵器の禁止に向けた国際会議について、ヤーナさんは「核が全世界でなくなるのが一番いい。(核廃絶について)考え始めたのはとても良いこと」と評価。いずれ環境問題のように地球規模で取り組む課題となることを期待している。
 一方、各国の首脳に対する視線は厳しい。「リーダーならみんなのために行動すべきなのに、(現状は)それが逆になっている。なんで数人のリーダーのために、私たちが死なないといけないの」
 新型コロナ禍もあり、最後に母国に帰ったのは4年前になる。思い出すのは愉快な親戚たちと過ごしたにぎやかな日々-。ヤーナさんは国際社会に切実な望みを託している。「ロシアと話をしてウクライナを守ってほしい。ウクライナにできることは、もうない」


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