原油や肥料高騰も、価格転嫁できず苦しむ農家「国は農政にもっと危機感を」

京都西川茶園の碾茶工場。蒸しや乾燥といった加工に使う機械を動かすのに必要な重油が高騰し、経費の負担が増している(京田辺市河原)

 ウクライナ危機などに伴う原油や肥料価格の高騰に京都府南部の山城地域の農家が苦しんでいる。コスト増加分を価格に転嫁できず、経営を圧迫する。今後の情勢も見通せず危機感を募らせる。国の補償を訴える声も強まっている。

■コロナ禍で商品価格は低迷

 「仕入れ先によれば、まだまだ重油の値段は高くなる。この先どうなるんやろう」。約3ヘクタールの畑で抹茶の原料となる碾(てん)茶をメインに生産する京都西川茶園。京田辺市河原の碾茶工場で西川泰徳代表(41)は漏らした。

 資源エネルギー庁の統計では2020年4月に62.6円だったA重油(小型ローリー)は今年4月、100.5円まで上昇。同茶園は碾茶の加工に年約20キロリットルのA重油を使用するが、2年前に比べ1リットルあたり約30円上昇しているという。

 上昇分を売り上げで吸収するのは容易ではない。生産する碾茶は茶会の需要が中心だが、コロナ禍で自粛が広がった影響で消費は落ち込み価格は低迷。JA全農京都茶市場によると、今年の平均単価は昨年比では上向きだが、コロナ禍以前には戻りきっていない。昨夏の小雨で樹勢が落ちた影響で、収量を上げることも難しいと西川さんはいう。

 JA全農は先月末、各地方組織に販売する肥料について最大94%もの値上げを発表。ロシアのウクライナ侵攻や中国の輸出規制などが影響した。地元のJA京都やましろはJA全農京都府本部と連携して値上げ幅を3~4割減らすよう努め、行政にも支援を要請する。ただ、あらゆる資材価格が上昇しており、負担増は避けられそうにない。

■人件費、資材、手数料「何もかも上がっている」

 約10ヘクタールで九条ねぎを生産する「とらこ」(八幡市戸津)の山本将人代表取締役(35)は「すごい苦しい状態」と苦境を隠さない。同社で栽培に用いる肥料はほとんどが有機肥料で、4~5割の大幅な上昇となるという。「肥料を変えて作れなかったら怖い」とそう簡単に代替策を取ることはできない。

 人手不足の競争激化で人件費も上昇。資材価格や産業廃棄物の手数料など「何もかもが上がっている状況」に加えての負担増。「それでもネギの価格は上がらない。食べることに対する価値が低いのではないか」と山本さん。「価格を上げられないのなら、国がしっかり補償をするべきだ」と訴える。

 47アールのハウスでトマトを栽培する京都杉田農園(京田辺市飯岡)。杉田充代表取締役(39)によれば、ハウスの加温に使うA重油代は昨年比で約17%上昇し、約100万円の経費増となった。商品は契約先への出荷が主だが、市場全体の生産量が上がる中で、価格には転嫁できず、コスト増はかぶるしかない。肥料は今年分は確保しているが「その先、肥料が入ってくるかどうかも見通せない危機的状況」と打ち明ける。

 杉田さんは強調する。「農産物の価格が上がらず、経費だけが増えれば経営は成り立たない。国は農政に対して、もっと危機感を持つべきだ」

九条ねぎの成長具合を確かめる山本さん。肥料価格の上昇に苦境を訴える(八幡市内里)

© 株式会社京都新聞社