浦上玉堂の書画44点、県に寄贈 倉敷・大原家伝来、7月公開へ

大原家から岡山県に寄贈された浦上玉堂「寒林けん處図」

 倉敷市の旧家・大原家に伝来する、江戸後期の文人画家浦上玉堂(1745~1820年)の書画44点と関連資料が、21日までに岡山県に寄贈された。「寒林けん處(かんしょ)図」(重要美術品)など代表作が含まれており、7月16日から、玉堂が生まれた岡山市北区天神町に立つ県立美術館で公開される。

 県に寄贈された玉堂の書画と関連資料は、日本初の西洋近代美術館「大原美術館」を倉敷市に創設した大原孫三郎らが集めた優品群で、国の重要文化財1点、重要美術品4点が含まれる。県立美術館(岡山市北区天神町)が所蔵する玉堂作品17点と合わせると、国内最大のコレクションとなる。

 玉堂は岡山藩の支藩・鴨方藩士として生まれたが、50歳で脱藩。諸国を巡り、琴詩書画を楽しんだ。独特のタッチの水墨画は国内外で高く評価されている。大原家は江戸期より続く素封家で、孫三郎は父孝四郎の実家・藤田家が玉堂と親しかった縁もあり、玉堂作品を精力的に収集。1938年には大原美術館で玉堂展も開いている。

 寄贈は「祖父孫三郎は作品を広く多くの人に鑑賞してほしいと考えていた。その思いを確かな形で実現したい」と大原謙一郎・大原美術館名誉館長が、2006年以来、玉堂を顕彰する特別展を3度開いている県立美術館に相談し決めた。

 寄贈された書画は、40代の玉堂が知人の長寿を祝って贈った絵巻から、独自の境地に至る晩年の山水画まで網羅し、画業の変遷をたどれる。中でも、円熟期を迎えた60代後半の「山雨染衣図」(国重要文化財)や「寒林けん處(かんしょ)図」(重要美術品)は代表作とされる。玉堂研究の第一人者でもある県立美術館の守安收館長は「名実ともに玉堂の研究拠点となり、顕彰をより進めていきたい」と話している。

 寄贈作品の公開は7月16日~8月28日(7月19、25日、8月1、8、22日休館)。

繊細な墨の表現が美しい玉堂円熟期の「山雨染衣図」

© 株式会社山陽新聞社