地震や津波で緊急会見、気象庁の女性課長は福井県出身 鎌谷紀子さん「被災者の気持ちに寄り添いたい」

石川県珠洲市で震度6弱を観測した地震について記者会見する鎌谷紀子課長=6月19日午後、気象庁

 地震や津波発生時に緊急記者会見を開き、国民に説明する気象庁のポスト「地震津波監視課長」に、福井県越前市出身の鎌谷紀子さん(55)が就いている。石川県珠洲市で震度6弱の地震が発生した6月19日の会見では、落ち着いた口調で解説した。

 鎌谷課長は2022年4月、同庁地震火山部で初の女性課長に就任した。地震津波監視課は地震と津波を24時間365日監視する部署で、職員数は約70人。津波警報は鎌谷課長が最終判断、承認して発表される。

 何かあればすぐに気象庁に駆け付けるため普段から飲酒をせず、休日も遠出は控えている。24時間の即応態勢で「いつでも頭がフル回転するようにしていないといけない」。入浴時も携帯電話を防水の袋に入れて持ち込んでいるという。

 中学時代から高校の地学の参考書を読んでいた「リケジョ」。アニメ「宇宙戦艦ヤマト」「銀河鉄道999」や1985年のつくば科学万博などの影響で、地球科学への興味が深まった。福井県立武生高校を卒業後、東北大学理学部地学科へ進学。大学院で火星の内部構造を研究し「サイエンスの知見を社会に生かせるところで働きたい」と気象庁に入った。

 鎌谷課長は6月16日、福井新聞の取材に対し、緊急会見に臨む姿勢について「国民の命と財産を守る使命があり、迅速で正確な情報発表ができるよう心がけている。大きな地震の後、被災地はとても不安だと思う。気持ちに寄り添い、何が起こっているか分かりやすく説明していきたい」と穏やかな口調で話した。会見では「分かっていることと分かっていないことを、科学的な知見を基に正確に正直にお伝えすること」も意識し「防災上の留意事項もしっかり伝えていく」と語った。

 20年度には同庁地震情報企画官を務めた。緊急会見で説明する優先順位は第1位が地震津波監視課長だが、課長が津波警報の判断に当たる際は、第2位の同企画官が会見する。21年2月に福島、宮城両県で最大震度6強の地震が発生した際は、地震情報企画官として午前1時過ぎから緊急記者会見を開いた経験もある。

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