「ゆうこう」 でシマアジ、マダイ養殖 戸石の幼なじみ2人、ブランド化へ奮闘

戸石ゆうこうシマアジ、マダイを手がける長野社長(左)と西元社長=長崎市牧島町

 長崎市戸石地区の若手養殖業者が、同市特産のかんきつ類「ゆうこう」を餌に混ぜたシマアジやマダイをブランド化しようと奮闘している。仕掛け人は昌陽水産の長野陽司社長(36)と雄昇水産の西元崇博社長(36)。幼なじみの2人は「お客さんから『さっぱりしておいしい』と評判を聞く。うまい魚を自分たちの値段で売る」と意気込んでいる。
 2人が所属する長崎市たちばな漁協養殖部会(西元崇博部会長、10業者)は主にトラフグを手がけている。長野社長は中学生のころ家業を継ぐと決め、高校在学中に船舶免許を取得。卒業と同時に仕事に就き、「日本一のトラフグを作りたい」と午前5時半から網場湾内にある養殖場へ向かう日々を過ごしてきた。
 しかし、トラフグはデリケートで近年の海水温上昇や赤潮など、さまざまな環境変化の影響で歩留まりが低下し、売価が原価を賄えなくなっていることに悩まされていた。養殖業経営の危機感を覚えた長野社長はシマアジも養殖し始めた。
 2019年、付加価値を高めようと、ゆうこうを餌に混ぜ養殖する実験をしていた長崎市水産センターに相談した。試験の結果、切り身の褐色化を遅らせる「抗酸化作用」の効果が確認されていた。ゆうこう農家と交渉し、ジュースなど加工品の製造過程で生じる搾りかすを仕入れることに。商談や加工、納品などに奔走し、20年に試験的にネットで販売すると、一定の評判を得た。21年からは地場スーパー大手のエレナ(佐世保市)が「戸石ゆうこうシマアジ」として取り扱うようになった。
 長野社長からノウハウを教わった西元社長もマダイで試した。結果は良好で市内の飲食店や病院食での利用など販路開拓も進んでいる。スーパーのジョイフルサン(長崎市)でも販売するようになった。
 ただ燃料や飼料費の高騰で養殖業界全体は苦しい状況が続く。西元社長は「コストは増えるのに魚価の相場は値上がりしない」と現状を訴える。生産量を増やしてブランド化できれば単価が上がると信じている。

自動で与えられた餌に群がるシマアジ(昌陽水産提供)

 西元社長は取り組みを成功させ、「漁協全体で展開したい」と構想を描く。生産性を上げるため海洋観測システムを開発しているMizLinx(ミズリンクス、東京)の実証実験も活用。養殖場に設置したカメラで水中を観察でき、水温や満腹度などが遠隔で分かる。自動給餌装置も取り入れ、効率化を図っている。
 2人は8月からは滑石市場での直売店をオープンする予定。ゆうこうシマアジ、マダイのほか、戸石の魚も販売。「将来的に戸石で販売できたら」と夢を語る。


© 株式会社長崎新聞社