新鋭カエハスが初優勝。東欧チームのガラシュもシリーズ初勝利を1-2で飾る/TCRヨーロッパ第3戦

 6月18~19日にベルギーのスパ・フランコルシャンで争われた2022年TCRヨーロッパ・シリーズ第3戦は、両ヒートともに新鋭が初優勝を記録するフレッシュな展開に。土曜オープニングは選手権首位のフランコ・ジロラミ(コムトゥユーPSSチーム・アウディスポーツ/アウディRS3 LMS 2)が、ポール発進からの最終ラップで痛恨のミスを喫し、予選最速を争ったイシドロ・カエハス(ボルケーノ・モータースポーツ/クプラ・レオン・コンペティションTCR)が大逆転劇でのTCRヨーロッパ初勝利を獲得。

 続く日曜リバースグリッドのレース2では、チェコ共和国出身のヤヒム・ガラシュ(ヤニク・モータースポーツ/ヒョンデ・エラントラN TCR)が自身初表彰台を勝利で飾り、僚友マット・オモラとともに東欧の小規模プライベーターがシリーズ初のワン・ツーフィニッシュを決めている。

 WTCR世界ツーリングカー・カップに直結する、TCR規定ツーリングカーの欧州格式リージョン選手権として争われるTCRヨーロッパは、このベルギー戦でも23台のエントリーを集める盛況となった。

 金曜最初のプラクティスは、前戦ポールリカールで今季初勝利を挙げたトム・コロネル(コムトゥユーDHLチーム・アウディスポーツ/アウディRS3 LMS 2)の最速で幕を明けると、続く2回目のプラクティスではジャック・ヤング(ハルダー・モータースポーツ/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)がトップに立ち、引き続き実力派ドライバーたちが上位を占めた。

 その流れを変えたのがQ1、Q2と続いた予選セッションで、気温と路面温度の影響から2度目のフライングラップでも大きなタイム改善が見られない難しいコンディションも影響し、Q1ではクリム・ガブリロフ(ボルケーノ・モータースポーツ/クプラ・レオン・コンペティションTCR)とカエハスのクプラ陣営がトップに躍り出る。

 Q2も同じような展開を辿り、ガブリロフの最速が決まろうかというタイミングで現ポイントリーダーの意地を見せたジロラミが一閃。この時点で、まだライバル陣営にもラストアタックが可能なセッション残り時間があったものの、クプラ艦隊を抑えたジロラミが今季初ポールを獲得。

 ガブリロフ、カエハスを経て、2列目4番手以降はニコラ・バルダン、フェリーチェ・ジェルミニ、そしてシリーズ復帰の元王者ジョシュ・ファイルズと、強豪ターゲット・コンペティションのヒョンデ・エラントラN TCRが続くグリッドとなった。

 そのまま現地土曜15時にスタートが切られたレース1は、フロントロウ2番手にいたガブリロフがスロースタートで後続のヒョンデ勢に飲み込まれ、カエハスもバルダンやファイルズの攻撃にさらされる展開に。その直後、レ・コンブ進入で後続がスピンを喫し、早くもセーフティカー(SC)出動が要請される。

TCR規定ツーリングカーの欧州格式リージョン選手権として争われるTCRヨーロッパは、このベルギー戦でも23台のエントリーを集める盛況となった
2度のプラクティスではともにトップ10入りしていたぺぺ・オリオラ(ブルタル・フィッシュ・レーシング/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)はオープニングラップでマット・オモラ(ヤニク・モータースポーツ/ヒョンデ・エラントラN TCR)に押し出され浮上ならず
ファイナルラップではたしかにブレーキに異常を来したように見えたフランコ・ジロラミ(コムトゥユーPSSチーム・アウディスポーツ/アウディRS3 LMS 2)
「長いコースでは簡単にタイヤがダメになる。ロングランの練習が活きたね」とR1勝者のイシドロ・カエハス(ボルケーノ・モータースポーツ/クプラ・レオン・コンペティションTCR)

 4周目のリスタート以降、レースラップが8周から10周に延長されても首位ジロラミの優位は揺るがず、誰もがアウディの勝利を確信した最終ラップ。気温34度の暑さも災いしたか、同じくレ・コンブへのブレーキングで白煙を上げたトップランナーはそのままエスケープゾーンへ。

 この瞬間、終盤戦を通じてファステストラップの応酬を繰り広げてきた2番手カエハスのクプラが首位に浮上し、そのままチェッカー。スペイン出身の若手有望株が、わずか17歳でTCRヨーロッパ初優勝を手にした。

「本当に、本当に良いレースだった。チームはここで真に競争力のあるクルマを授けてくれて、僕らは本当に強いペースを維持することができた。伝統的にスパでは“ダブルウイン”を決めてきたチームだし、明日は是非それを実現したい。TCRカーで追い抜きを仕掛けるのは本当に難しいけど、なんとかそれを実現して、将来的には僕もシリーズで3本の指に入るドライバーになりたいんだ」と、喜びと抱負を語ったカエハス。

 一方、失意の2位に終わったジロラミは、レース後にラストラップが「自身のエラーだった」ことを認めた。

「コムトゥユー・レーシングのチーム全員に謝罪したよ。自分のポケットのなかにレースの勝利がありながら、最終ラップで重大なミスを犯したんだ。僕らにとって、クルマにとって、そしてタイヤにとっても、それは困難な1日だった」と振り返ったジロラミ。

「最終ラップでブレーキに問題が発生したと感じ、マージンもあったから少し早めにブレーキングを開始した。しかし、そこで何故かロックアップしてしまったんだ。最終的に僕の完全なミステイクだ。5ポイントを失ったのは痛いが、それでも現在のリードには満足しているよ」

 明けた日曜のレース2は、フロントロウ2番手からスタートを切ったアウト側のコロネルが失速すると、3番手にいたオモラがポジションを引き継ぎ、オープニングのオールージュから早くもヤニク・モータースポーツがワン・ツー体制を築く。

 そのまま8周のレースを走破した2019年TCRイースタン・ヨーロッパの年間2位獲得者ガラシュは、僚友オモラを従えてフィニッシュラインへ。自身シリーズ初の勝利を、これ以上ない形で手にすることとなった。

「僕のアイドルでもあるミハエル・シューマッハーが最初のレースで優勝したスパで勝てるなんて、本当に信じられないぐらい最高の気分だ。エラントラはスタートからまるでロケットのようにラ・ソースへと飛び込んで、それが大きな勝因になった。ここで勝てることを自分自身に証明できたし、大いに今後のモチベーションになるよ」とガラシュ。

 年間全7戦を予定する今季のTCRヨーロッパ・シリーズは、続く第4戦で早くも折り返し点を迎え、7月1~3日にドイツのノリスリンク市街地での2ヒートが争われる。

レース2はリバースポール発進のヤヒム・ガラシュ(ヤニク・モータースポーツ/ヒョンデ・エラントラN TCR)がレースを支配
レース1で5位、レース2では2番手発進から3位と、依然として好調を維持するトム・コロネル(コムトゥユーDHLチーム・アウディスポーツ/アウディRS3 LMS 2)
レース1勝者のカエハスとの攻防を制したジャック・ヤング(ハルダー・モータースポーツ/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)が6位に入った
「シーズンのスタートが遅いのはチームの伝統のようだ」と、1-2を決めたヤニク・モータースポーツのチームマネージャーを務めるトマシュ・コバッチ

© 株式会社三栄