ローカル鉄道の見直し 宮城県でも議論 人口減少やコロナ禍で利用者が低迷

赤字ローカル鉄道の見直しについてです。人口の減少やコロナ禍を背景に全国に広がっています。バスに切り替えるのか。鉄道として残すなら、どうやって残すのか。議論は宮城県内でも熱を帯びつつあります。

ローカル線の沿線に危機感が広がっています。発端は5月10日。JR東日本の記者会見で、深沢祐二社長が赤字ローカル線の見直しに言及しました。
JR東日本深沢祐二社長「残念ながら人口減少は止められない。どのような交通モードが適当であるかも含めて、議論をさせていただきたい」

JR東日本がローカル線の見直しに言及

JR東日本は2021年度、949億円の赤字でした。赤字は2年連続。コロナ禍に伴うリモート勤務の普及や出張の手控えも一因です。首都圏の稼ぎで東北などのローカル線を支えることが、難しくなりつつあります。
そこでJR東日本は、利用者が少ないローカル線の路線別収支を年内に公表します。バスに切り替えたり、地元の自治体に支援を仰いだりといった見直しを話し合いたい考えです。

利用者が少ないローカル線を公表へ

交通問題に詳しい宮城大学徳永幸之教授「赤字ローカル線問題は、ずっと宿題としてある。コロナの影響であったり、近年の災害であったり、経営環境がより厳しくなってきた」

路線別収支の公開は、他のJRが先行しています。北海道、四国、九州に続き、西日本も4月に公開しました。このうち西日本と九州は、1日1キロ当たりの利用者が2000人に満たないところを公開の対象にしました。100円を稼ぐのに2万円以上の費用がかかる区間もありました。

JR西日本などの基準にJR東日本がならうと、宮城県内では石巻線や陸羽東線の一部が公開の対象になる公算が大きくなります。
東日本大震災後に一部がバスに切り替わった気仙沼線や大船渡線のうち、鉄道として残っている区間の行方も注目されます。

沿線自治体が危機感

石巻線・陸羽東線が対象か

JR東日本によると、2019年度の1日1キロ当たりの利用者は、石巻線は1193人、気仙沼線は232人、大船渡線は754人でした。
陸羽東線は、小牛田駅と古川駅の間では3714人と2000人を上回りましたが、古川駅と鳴子温泉駅の間は949人、鳴子温泉駅と最上駅の間は79人にとどまりました。陸羽東線の地元、大崎市の伊藤康志市長は危機感を募らせています。

陸羽東線の地元・大崎市伊藤康志市長「陸羽東線は、全国からの誘客、街づくりにも必要不可欠。赤字だからローカル線を廃止などという拙速な議論は、ぜひ避けていただきたい」
利用者「鉄道がなくなるなんて考えもしないもの。なきゃ困るでしょうよ」「バスよりも電車通学が良いな。朝、学校に行く時、ちゃんと同じ時刻に来てくれる」

ローカル線の在り方を巡っては、国土交通省が有識者の検討会を設け2022年夏のとりまとめを目指しています。
国土交通大臣に対し宮城県を含む28道府県の知事は5月中旬、文書で要望しました。
「路線の廃止は、地域との十分な協議を経た上で、慎重に考えるようにJRを指導してほしい」
ただし、バスに切り替われば利用者は皆不便になる、というわけではなさそうです。

気仙沼線の大部分は震災後、BRTと呼ばれるバスに生まれ変わりました。気仙沼駅から柳津駅までの所要時間は15分ほど延びた一方、乗り降りできる場所は7カ所増えました。
利用者「良いと思うんですけどね、乗りやすくて。病院の近くから出ますからね」

気仙沼線BRT

鉄道の存続を目指し、関わりを深めている自治体もあります。滋賀県の私鉄、近江鉄道は赤字で廃線の危機に追い込まれました。存続に向け滋賀県などの地元自治体が、鉄道の施設を保有して管理する公設民営方式に2024年度から移行します。

山形県長井市は2021年春、第3セクター山形鉄道の駅舎と一体となった新しい市役所をつくり、散らばっていた行政機能をまとめました。
交通問題に詳しい宮城大学徳永幸之教授「高度経済成長期以降、車中心の街づくりになってしまった。病院の建て替えとか学校の統廃合とか、そういう機会に鉄道を中心に利便性が高くなる形を考えることが大切」
「かつて、乗って残そうという標語で、(鉄道の存続を求めて)頑張っていた地域があったが、実際に乗ってくれていたかというとそうではない。自分事として鉄道を残す必要があるのであれば、自ら体験しながら、どうすれば良いか、地域全体で考えていく必要がある」

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