「核兵器 絶対使わせない」露侵攻を危惧 長崎市長、核禁会議で演説

「『核兵器を絶対に使わせない』という共感の連鎖を世界中に広げよう」と訴える田上市長=ウィーン

 オーストリア・ウィーンで21日開幕した核兵器禁止条約第1回締約国会議で、長崎市の田上富久市長が演説。ロシアのウクライナ侵攻に触れ「『核兵器を絶対に使わせない』という共感の連鎖を世界中に広げよう」と呼びかけた。2日目の22日には同市の被爆者で医師、朝長万左男さん(79)が核兵器の非人道性を訴えた。
 田上市長は世界8174都市(1日時点)が加盟する非政府組織(NGO)平和首長会議の副会長としてスピーチ。会長の松井一実広島市長も演説した。
 田上市長は、核禁条約の発効から約1年半が経過した今、ウクライナ危機で「第3の戦争被爆地を生み出す危機が高まっている」「条約の意義が非常に大きくなってきている」と強調。核兵器の使用や威嚇を防ぐことは「条約に賛成していない国も共有できる行動原則だ」と述べた。
 被爆者の体験を「条約の原点」と表現。混沌(こんとん)とした世界情勢だからこそ「被爆者の声を思い起こし、勇気に変えて」と求めた。初の締約国会議が核兵器廃絶に向けた機運醸成の契機となるよう力強く訴えると、各国政府の代表らから拍手が送られた。
 演説後、田上市長は報道陣に対し、日本政府が締約国会議へのオブザーバー参加を見送ったことについて「残念に思う」と語る一方、「核禁条約で核被害者に光が当たる。(被害者援助の)スタートになる」と期待感を示した。
 締約国会議は21日開幕。世界各地で行われた核実験の被害者支援や環境汚染の回復などが重要テーマで、最終日の23日に政治声明を採択する予定。条約に反発する米国などの核保有国は参加していない。


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