長崎県大村市の総合建設業、平山組(中村人久社長)の新社屋が先月、同市東三城町に完成した。社長をはじめ社員に特定の席はなく、その日の仕事内容によって社内で自由に働く。社長室はない。カフェのようなロビーやボルダリング設備、カラフルな壁紙の会議室など若手社員のアイデアを採用し、社員の働き方改革と併せて高卒者ら若手人材の獲得につなげたい考え。
新社屋は木造2階建て、延べ床面積424平方メートル。木板の繊維が縦横に直交するように重ねたパネル建材を使う「CLT工法」を採用した。柱を必要とせず空間を広く取れるほか、環境への負荷が小さいことから国連の持続可能な開発目標(SDGs)推進にもつながるという。
社内には通常の事務机のほかカウンター席やボックス席などがあり、椅子は疲れにくいゲーミングチェアを使う。休憩室には人工芝を敷き詰め、森の壁紙にビーズクッションやハンモックを備えた。1階にはカウンターキッチンがあり、1人暮らしの社員が夕食を作って帰ることもあるという。
こうした社屋にした狙いの一つに、高卒者をはじめとした若い人材の獲得がある。新社屋の建設プロジェクトを手がけた中村友久常務は「建設業は『きつい、危険、汚い』という3Kのイメージがある。志望する人であっても地方より都会のゼネコンを目指す人も多い」と話す。
このため地元の建設業に目を向けてもらおうと、昨年からカレンダー通りの休日取得といった働き方改革に着手。現場に出る前のワンクッションとしてデスクワークが中心の「建設ディレクター」職の新設を予定しており、普通科の生徒にもアプローチしている。今年は新規高卒者3人が入社し、来年度は7人の採用を計画。新社屋の見学希望も寄せられているという。
中村常務は「社員が楽しく働き、自己成長できる場とすることで、3Kを『健康、環境、革新』に変えていきたい。新社屋のロビーを地域のイベントに開放するなど、地域の人が自然と集まる場所にできれば」と展望を語る。