みんなのせとうち備後芸術祭(令和4年4月15日~5月15日開催) ~ 福山市内海町で楽しむ海辺の町のアート

海岸沿いの景色や町並みを楽しみながら巡る芸術祭に行ったことがありますか。

広島県福山市内海町の田島・横島で「みんなのせとうち備後芸術祭 Art Festival 2022 in UTSUMI」が開催されました。

2022年の開催期間は、4月15日(金)から5月15日(日)。

瀬戸内海にぐるりと囲まれた福山市内海町での芸術祭。

春の日差しでキラキラ輝く海辺をドライブしながら巡ったのでレポートします。

みんなのせとうち備後芸術祭とは

主催は、広島県東部で活動している芸術家たち「ボラの会」が中心の実行委員会です。

審査や授賞がない「アンデパンダン」という形式で、プロ・アマチュアにかかわらず誰でも自由に出展できます。

広島県福山市内海町の田島・横島地区にて、15か所の会場で2022年は約100人が参加。

地元のかたや子どもも参加しています。

開催日は週末の金・土・日と祝日のみです。時間は午前11時~午後5時で、入場は無料です。

意外と広い内海町。どこから周る?

筆者はまず、田島にある「内海ふれあいホール」を目指しました。

アーチ型のかわいい内海大橋を渡り内海町へ。

海岸沿いの南国風の植物になんだかテンションが上がります。

内海ふれあいホールの2階に作品が展示されていて、パンフレットも置いてありました。

▼パンフレットには会場や地図・出展者が記載されているので要チェックです。

カフェ「うみと」からのせとうちの眺め

内海ふれあいホールの2階には、カフェ「うみと」もあります。

みんなのせとうち備後芸術祭のリストの2番目掲載となっており、店内に作品が展示されていました。

▼クジラの飛行船と猫は段ボール製。

細かい部分までていねいに作られていて、遊び心もあってかわいいですね。

店内は明るく開放的で、オーシャンビュー。

窓に面して席が並んでいるので、どの席からも海がよく見えます。

奥にはテラス席があって、風に吹かれながら眺めるせとうちの風景も素敵。

最高のロケーションですね。

すごく綺麗な夕焼けが見られるそうなので、夕方にも行ってみたいです。

のんびりと海を眺めながらのパフェは格別。

バニラの風味が濃厚なアイスのなめらかさと、シャリシャリしたフローズンのベリー類。

そしてサクサクのコーンフレークの食感のバランスが絶妙で美味しい。

プラチナブロンドの髪色と笑顔が素敵で、とても気さくなカフェの店員さんに、オススメの会場を聞いてみました。

会場のスタッフさんに好きな作品を聞きながら周るのもおもしろそうです。

そのなかのひとつ、リスト3番目の「ふくろうの花畑」へ行ってみます。

ふくろうの花畑の訪問時期は4月下旬がおすすめ

さざ波がきらめく海沿いの道を東へドライブ。

来るときに渡った内海大橋をくぐり抜けます。

パンフレットにはGoogleマップのQRコードが印刷されているので、次の会場へ迷わずスムーズに移動できました。

検索の手間がはぶけて便利ですね。

▼会場付近には、みんなのせとうち備後芸術祭の目印の青い看板が立っています。

▼ふくろうの花畑の看板犬のふくちゃん。おとなしくていい子。

ん?あれは何でしょうか…。

なにやらかわいい物体が…。

ころんとしていて、ゆるキャラぽくてかわいいですね。

正面から見るとさらにかわいいです。

タイトルは「森のたましい」で作者は伊藤彰宏(いとう あきひろ)さん。

以前はニューヨークで活動されていた島根県在住の彫刻家です。

この作品は利用されなくなった木材、廃材だけで作られているのだそう。

森の命を大切にしてほしいという伊藤さんの願いがこめられています。

この先の未来も人類が自然と共存していくために、限りある資源を大切にしていきたいですね。

▼このカラフルな作品のタイトルは「発生」で、作者は岡田睦生(おかだ むつお)さん。

生命力の発生をイメージしているそうです。

なんだか神秘的ですね。

▼そして少し離れたところにある、この作品のタイトルは、その名も「少女 A」。

作者のラモさんの作品説明は『どこにでもいるような女の子』!!

タイトルと説明が、なかなかの衝撃でした。

想像がふくらみますね。

作品を取り囲む斜面には、芝桜が植えられていたそうです。

例年4月下旬から5月上旬にかけて一面の花畑となるようですが、今年(2022年)は開花が早く、ゴールデンウイーク前にすっかり終わっていました。

▼満開の時の写真が、ふくろうの花畑カフェの隣にあるふくろう庵に飾ってあります。

今回は見ることができず残念でしたが、来年の再訪を楽しみにして、

今度は少し早め(4月の20日頃?)に訪れてみたいと思います。

逆境にくじけず、挑戦し続ける。at 番屋

海沿いにある建物の周囲には釣り人もちらほら。

向かったのはリスト12番目の「番屋」です。

会場の中からも海が見えます。

▼色鮮やかな動物たちのイラストは、福山市出身の笠井伸二(かさい しんじ)さんの作品。

会場には笠井さんの作品が他にもたくさん展示されています。

笠井さんは15年ほど前に交通事故で脊椎を損傷し、胸から下が麻痺して車いす生活になりました。

絵を描くことはリハビリとして始め、しだいに夢中に。

最初の頃は思うように体が動かず、花を描いても花だとわからないようなレベルだったそう。

▼そこから努力に努力を重ね、今ではこんなに素敵なイラストを描かれています。

カラフルで夢があって、見ていて元気が出ますね。

個展を開いたりイベントに出展したりと、多方面で活躍されています。

逆境にくじけず、あきらめず、挑戦し続ける。

そんな笠井さんの作品に勇気をもらえました。

▼これらの作品は「みちくさ」というお絵描き教室に通う子どもたちが描いた、

大漁旗をモチーフにした「縁起の良い旗」。

子どもたちがそれぞれ持つイメージが、のびのびと表現されています。

のんびり散策しながら周ろう

次に訪れたのは徒歩で巡るエリアです。

それぞれの会場が近いので、お散歩感覚で周れます。

パーキングになっているのは、廃校になった小学校の校庭。

なんだかノスタルジックなおもむきがありますね。

スタッフのかたが午後5時過ぎに門を閉めに来られるので、置きっぱなしにしないようにご注意を。

春の終わりの穏やかな日差しのなか、地図を見ながらとことこ歩きます。

知らない町の路地歩きはなんだかワクワクしますね。

兼田邸から愛を

これはリスト9番目の「兼田邸」にあった浜本千尋 (はまもと ちひろ)さんの作品です。

タイトルは「ウクライナへ愛を送る!

▼同じく浜本さん作の「No War

ウクライナに平穏な日々が一日も早く戻るよう、祈らずにはいられません。

田島横島食文化伝承館の命の形

次に訪れたのは、リスト10番目の「田島横島食文化伝承館」です。

玄関を入ってすぐにあるのは、

千葉県出身の造形作家の武内カズノリ(たけうち かずのり)さんと

奥さんの津野元子(つの もとこ)さんの作品です。

▼光るオブジェは魂を吸い込んでいるのでしょうか。それとも吐き出しているのかな?

ふわふわの白いものが津野さんの作品。絹糸で作られているそうです。

▼武内さんの作品。ライトは光ったり消えたりしています。

並んでいる顔は、東日本大震災の被災地で出会った子どもたちをイメージしたものだそうです。

みんな無邪気な、はじけるような笑顔。

生命力あふれる子どもたちの笑顔を見ていると、幸せな気持ちになれますね。

別室の赤い部屋の中にあるのは、福山市民の並木貴子(なみき たかこ)さんの作品です。

天井も床も壁も真っ赤な部屋の中でスピーカーから流れているのは、心臓の鼓動の音。

母親の胎内にいるイメージを感じてもらいたいそうです。

パンデミックの終息と平和を願って描かれた作品たち。

作品の足元に置いてある花のオブジェは、人々の暮らしの営みをイメージしているのだそう。

今という時代の状況へのやるせなさと、魂の叫びのようなものを感じました。

部屋に鳴り響く鼓動の音が、生きていることの実感と感謝の気持ちを呼び起こします。

時を感じる皇森神社

次はリスト11番目の「皇森神社」へ。

境内の横にそびえるのは、樹齢450年の椋(むく)の樹。

空を見上げるような高さに、450年という時間の流れの長さを実感します。

奥に何か…何かが見えますね。

こちらにも武内カズノリさんの作品が。

つられてニッコリしてしまうような、とってもいい笑顔ですね。

▼明治44年の奉納品。

ここは1000年以上の昔に、神武天皇が東征の際に立ち寄られたという歴史のある神社です。

その当時の人々はどんな暮らしをしていたんだろう、と遠い昔に思いをはせました。

ボラギャラリーと奥の蔵

とことこ町歩きは続きます。

リスト5番目の「ボラギャラリー」。

かっこいいアーティスティックな作品がたくさん!

芸術家たちの独特の感性があふれていました。

リスト6番目の「奥の蔵 1F・2F」はボラギャラリーの建物の奥にあります。

▼2階にあるこの作品のタイトルは「此処(ここ)」で、作者は太田琴(おおた こと)さん。

フラワーアレンジメントのコラボレーションは園田雅子(そのだ まさこ)さんです。

家具や壁に塗られている白い模様は、波の模様。

太田さんが初めて内海大橋を渡り、出会った景色を見て感動したときの、心の動きを表現しているのだそう。

そのうれしい気持ちが伝わってくるような、さわやかな躍動感がありますね。

柱と梁には柿渋が塗られています。

▼白い波模様の塗料には田島の砂が使われているそうです。

古民家の民宿あそびでのんびり

リスト7番目の「民宿あそび」では、古民家再生事業を営まれているかたからお話を聞けます。

印象に残ったのは、「あなたの人生を楽しんでください」という優しい言葉と、「古民家のメンテナンスと同じくらい、歯のメンテナンスは大切!」というお話。

定期的、継続的なお手入れが必要なのは、建物も歯も同じですもんね。

民宿は、現在は新型コロナウイルス感染症の影響で休業中なのだそう。

おじいちゃんやおばあちゃんの家に遊びにきたような、なんだか懐かしい雰囲気のなかで、まったりのんびり過ごせそうです。

▼風情のある囲炉裏(いろり)のまわりに並べられた、素朴さを感じる美しい作品。

町歩きの後は、窓を開けて波の音を聴きながら、静かな海岸をさらに東へドライブ。

田島の東端の海岸からは、対岸の沼隈町にある阿伏兎観音が遠目に見えます。

海をぼんやり眺めているとなんだか癒されて、のびのびとした気持ちになりました。

この近くには、クレセントビーチという三日月(みかづき)型の素敵なビーチもあります。

シトラスの谷からのメッセージ

帰り道に、リスト4番目の「シトラスの谷」へ。

ふくろうの花畑に近いエリアです。

▼手描きのわかりやすい地図で作品の位置を確認できます。

メェメェ~。おいしいよ~。

ごはんに夢中なかわいいヤギさんたち。

シトラスの谷の名のとおり、作品の周りには柑橘類の木々が青々と並んでいます。

そしてアイリス畑の横にある坂を上がって、木々の生い茂る道を進んでいくと…。

タイトル「平和の風」に出会えました。

作者は広田 和典(ひろた かずのり)さんです。

海の見える丘で、せとうちの風に吹かれはためく、

想いがこめられた2色の旗。

なんだか目頭が熱くなりました。

広島県のここ福山市内海町から、平和を祈る風が海と大陸を越えて、どうか彼らのもとへと届きますように。

おわりに

みんなのせとうち備後芸術祭は、福山市内海町の田島・横島を舞台に、アートと自然と町並みの融合を感じられる、地域に密着したイベントでした。

旅をするようにアートを楽しめます。

福山市内海町は芸術祭が終わってもまた訪れたいと思えるような、魅力にあふれた町。

紹介できなかった素敵な作品が他にもたくさんありました。

ぜひ次回のみんなのせとうち備後芸術祭で、お気に入りの場所や作品を見つけてくださいね。

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