東川隆太郎の「かごしま世間遺産探訪記」ーvol28.枕崎市内の南薩鉄道廃線跡(枕崎市広域)ー

乗ったことはないけど、動いているのを見たことはある。それが私にとっての南薩鉄道の記憶である。
昭和59(1984)年3月17日に営業が停止、大正3(1914)年4月1日の開業から約70年の歴史に幕を閉じた。
営業区間は、最終的には伊集院駅から枕崎駅までで、支線として大崎線や知覧線も営業されていた。
沿線の方々にとって思い入れの深い鉄道であったようで、回顧するイベントも頻繁に催されている。
また営業車両の一部は、南さつま市加世田の鹿児島交通のバスステーション敷地内に保存されており、隣接の資料館と共に往時を偲ぶことができる。
マニアとまでは名乗れないが、鉄道関係も好きな方の私は、定期的に当地を訪れて「乗ってみたかったなあ。」との気持ちを膨らませている。
さて、廃線から38年経過した現在、駅舎のあった場所や線路跡も様変わりし、宅地やサイクリングロードなどに転用されている。

38年はそれなりの年月ではあるが、たかだか38年ともいえ、廃線路をたどり、点在する鉄道遺産をまだまだ十分に楽しむこともできる状況である。
もちろん、日置市や南さつま市、南九州市にそれらを求めても面白いが、今回は南薩鉄道の営業区間では最南端の駅を有していた枕崎市の廃線跡に注目してみたい。

南薩鉄道の開業は大正3年。
伊集院駅から加世田駅までの区間であった。
枕崎駅が開業したのは昭和6(1931)年3月10日のことである。
開業から廃止まで枕崎市における駅舎数はかわらず、北から金山駅、鹿篭駅、そして枕崎駅の三駅である。

まずは、金山駅周辺の状況から。
駅跡はなんとなくここかなと理解できる程度で、藪である。
バス停が目印。

金山駅跡:東川隆太郎撮影

駅跡の加世田方面の花渡川をまたぐ国道270号の川床橋の東側の道路が線路跡で、それは国道270号の金山跨線橋の下に直進すると伸びる感じが、かつて線路であったことを静かに伝える。
金山駅から枕崎方面へは一度花渡川を越える鉄橋があったが撤去されている。
その後線路は、道野町の国道270号の神浦橋の下をくぐり、付近は藪ながら線路跡であることは確認でき、そのまま桜山町に入る。

神浦橋付近の線路跡:東川隆太郎撮影

さて、ここから鹿篭駅までの線路跡が面白い。
段差下の縁沿いを線路跡は伸びるが、ここで線路跡は土盛をされて川とは反対側の微高地と一体化する。
線路が現役で活躍している頃には、切通しであった場所が廃線により再び埋められたことになる。
しかも埋められた箇所の線路跡の上には、津留神社が建立されている。
廃線跡が埋め戻され神社を建立とは珍しい。

津留神社:東川隆太郎撮影

津留神社から鹿篭駅方面を望む:東川隆太郎撮影

その後、田んぼのなかで目立っている線路用の築提跡をしっかり確認したら、

桜山町の築堤跡:東川隆太郎撮影

桜山町の線路跡:東川隆太郎撮影

線路跡は花渡川の際を通って、

花渡川沿いの線路跡:東川隆太郎撮影

鹿篭駅跡まで続く。
駅舎跡はここもバス停が目印。

鹿籠駅跡:東川隆太郎撮影

その後、寿町や平田町の住宅街となった場所の空き地に痕跡をにじませつつ、

寿町の線路跡:東川隆太郎撮影

昭和49年12月に線路をまたぐように設置された明和町と緑町を結ぶ越脇橋を通るが、

腰脇橋:東川隆太郎撮影

現在はその周辺の宮田町の線路跡は住宅が建て込み、それらがまっすぐに並んでいる。

宮田町の線路跡:東川隆太郎撮影

枕崎駅跡に現在建つスーパー前の道路には、近年まで線路が残されていたが現在は撤去されている。

大きな三角屋根が印象的だった枕崎駅舎は平成18年に取り壊された。南薩鉄道の駅舎としては二代目であった。昭和38年に指宿方面から国鉄指宿枕崎線が延伸され、国鉄と共用する駅舎であったことから、南薩鉄道が営業停止されてからも駅舎は利用され続けていた。
それだけに、南薩鉄道は利用したことがない私も、枕崎駅だけは利用したことがあった。
国鉄及びJRの駅としてであるが。

2004年当時の旧枕崎駅舎:東川隆太郎撮影

2004年当時の枕崎駅舎:東川隆太郎撮影

2004年当時の枕崎駅舎前:東川隆太郎撮影

ついつい熱く廃線を辿ってしまったが、枕崎市内だけでも魅力的な箇所が名残としてある南薩鉄道の廃線跡。
これ以上失われることがないことを祈りつつ、全部をひっくるめて世間遺産に認定した。

参考文献
鹿児島交通南薩線 南薩鉄道顛末記上・下 発行 2008年8月9月
著者 高平薫平・田尻弘行 発行所(株)ネコ・パブリッシング
枕崎市誌 下巻 平成2年三月 発行 編纂者 枕崎市誌編さん委員会

この記事はかごしま探検の会の東川隆太郎さんに寄稿いただき、カゴシマニアックス編集部で編集したものです。

かごしま探検の会ホームページはこちら

© カゴシマニアックスーKagoshimaniaXー