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かつて国民的海産物だったアサリ。
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干潟の減少に加え、魚に食べられる食害、エサのプランクトン不足などで激減し、今や流通量の9割は輸入物です。
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そんな中、国産アサリの増産に一役買うかもしれないのが、ニワトリのふんです。
水産会社 社長
「救世主が現れたような感じ」
きょうのテーマは、『瀬戸内海で進行中 まさかの国産アサリ増産 大作戦』。
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アサリの流通量ですが、11年前は国産アサリの比率は半分近くありましたが、おととしは1割にまで減っています。国産がなくなってしまいそうな激減なのです。
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いろんな原因が指摘されていますが、その1つが、このことわざ『水清ければ魚棲まず』―。下水処理が進んだことで赤潮を引き起こす窒素やリンの排出が減り、海はきれいになりました。反面、魚や貝にとってはエサのプランクトンが減り、住みにくい海になったというわけです。せっかく海はきれいになったのに難しい問題です。
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そんな中、注目したいのが広島大学の研究者らが開発した「MOFU-DX(モフデラックス)」、通称・MOFUという鶏ふんから作った有機肥料です。
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これは、Marine(海)Organic(有機)Fertilizer(肥料)Utility(効果)の頭文字をとったものです。鶏ふんは、畑の肥料ではよく使われるものですが、この肥料を使っている広島県内一のアサリの産地・廿日市市 大野地区を訪ねました。
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4年前からMOFUを使ってアサリを養殖している濱本水産の漁場です。干潟に張ったネットは、エイなど大きな魚に食べられる食害を防ぐためです。
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従業員が手掘りで収穫しているアサリは、貝の赤ちゃん(稚貝)をまいて、3年間育てたものです。その様子は、まるで畑の農作業です。
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MOFUの効果について代表の濱本さんが開口一番、話したのは、貝のへい死が少なくなったことでした。
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濱本水産 濱本恵津生代表
「あれが、死んだ貝の殻です。以前、MOFUをやる前は、ものすごく死んでいたんですよ。これでいくと、3分の1くらいしか死んでいないですよね、当時に比べて」
貝の身入りもよくなったということです。
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濱本恵津生代表
「データとしては出ていないが、2か月くらい、身が早く入るようになった。それから、殻が安定して大きくなった」
専門家に尋ねたところ、へい死の原因はエサ不足による餓死。
アサリの採掘場所のすぐ近くにMOFUが埋めてありました。
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柴田和広記者
「(MOFUを手にとって)別になんのにおいもないです」
濱本恵津生代表
「鶏ふんといったら嫌な感じがするけど、普通肥料。害はない、全然」
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このMOFUは、ことし2月に埋めたもので、1.5ヘクタールの干潟におよそ720個あります。ここからプランクトンの増殖に必要な窒素やリンなどが少しずつ溶け出していました。
アサリの生産量は、毎年の稚貝の確保量にもよりますが、濱本水産の場合、以前は年間10トン前後だったのが、MOFUを使い始めてから10トンから20トンの間まで増えたということです。
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MOFUの設置には年間100万円ほどかかるものの、「大野あさり」のブランド力もあって採算はとれるということでした。
濱本水産 濱本恵津生代表
「救世主が現れたような感じです。MOFUは漁場が本来ある姿に戻りつつある。本気でやらないといけない使命感がわいてきた」
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MOFUにはいくつか種類があって、代表的なものが円柱形のブロックです。作っているのは、佐賀県にある製造工場。水炊き店「博多華味鳥」を展開するトリゼングループの施設です。
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MOFUは、グループの養鶏場で大量に飼育するニワトリのふんの有効活用策として開発されました。
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独自に作り出したバイオエキスをかけて完全に発酵させることで、においや大腸菌を除去しています。熟成ケージという倉庫で1か月寝かせ、さらさらの状態にして機械で圧縮し、ブロック状の肥料にします。
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このMOFU開発の共同研究者が、広島大学名誉教授の山本民次さんです。
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広島大学 山本民次 名誉教授
「20%~30%、アサリの身が太るというのは、これはものすごいと思いました」
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4年前、山本さんは、広島・尾道市の干潟で実証実験をしました。板で仕切った区画でアサリの成長を調べたところ、MOFUを使った区画のアサリは、使わなかった区画のものより30%ほど太ったことがわかりました。
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その後、大野地区の干潟で区画を仕切らずに行った実験でもMOFUを使った場合は平均14%多く太り、あらためて、その有効性を確認したということです。
山本さんに濱本水産の漁場の様子を見てもらいました。
山本民次 名誉教授
「死ぬ貝が少ないという実感を得て、いいかなと。いい結果が出ているんじゃないかと思う」
廿日市市のアサリの漁獲量は、3年前のデータで年間42トン。県内の4分の3を占めています。とは言え、ピーク時に比べると10分の1以下です。
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濱本水産のことしの目標は20トンですが、濱本代表は、「これから養殖面積を増やし、100トンを目指したい」と意気込んでいました。
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― 「大野アサリ」ブランドが復活する日も遠くないのでは…。ただ、多くの業者は、原料の鶏ふんのイメージがよくないことや費用がかさむことがあって、現段階では様子見のようです。それでも全国では、アサリ以外にもカキやノリなど60余りの漁場で使われ始めたということなので、今後も広がっていく可能性はあると思います。まさかの大作戦を見守っていきたいです。