「島守」の魂安らかに 沖縄、荒井退造(宇都宮市出身)らまつる塔で慰霊祭

 熾烈(しれつ)な沖縄戦時下で行政の指揮を執った同県知事島田叡(しまだあきら)と警察部長荒井退造(あらいたいぞう)(栃木県宇都宮市出身)、殉職した県職員をまつる「島守の塔」の慰霊祭が23日、沖縄県平和祈念公園内で行われ、遺族や関係者らが、島田と荒井以下、職員469人の冥福を祈った。

 参列者全員で黙とうした後、沖縄県の池田竹州(いけだたけくに)副知事が、玉城(たまき)デニー知事の代理として式辞を述べた。「島田県知事、荒井警察部長をはじめ県職員は、県民の命を守るため疎開や食料の確保に奔走し職責を全うした。現在の沖縄の平和と繁栄が77年前に犠牲となった尊い命の上に築かれていることを深く胸に刻む」と追悼の意を表した。

 沖縄県議会や県警の関係者も言葉をささげた後、戦没県職員たちの慰霊顕彰に取り組む「島守の会」や、島田の出身校兵庫高(兵庫県)の関係者、職員の遺族らが献花し平和への祈りをささげた。

 沖縄県南城市稲嶺、米盛寛二(よねもりかんじ)さん(79)は、警察官だった父金蔵(きんぞう)さんを亡くした。住民避難のために壕(ごう)を渡り歩き、島田や荒井と一時期、一緒だったという。「平和な世の中のため、島守の塔は永久に残るべきものだ」と先人の犠牲に思いをはせた。

 授業で訪れた沖縄女子短大2年、首里藍楓(しゅりあいか)さん(19)は「若い世代がもっと真剣に沖縄の平和を考えなければいけない」と語った。

 島守の塔は、島田と県職員の慰霊塔、島田と荒井の「終焉之(しゅうえんの)地」の碑、2人を含め亡くなった県職員の名前を刻んだ碑などの総称。慰霊祭は新型コロナウイルスの影響で規模が縮小された。

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