<社説>賭博汚染 スポーツ選手教育見直しを

 スポーツ界の規範意識は一体どうなっているのか。 バドミントン男子シングルスでリオデジャネイロ五輪の有力なメダル候補と期待されていた桃田賢斗選手と2012年ロンドン五輪代表の田児賢一選手が、東京・錦糸町の違法カジノ店で賭博をしていた。警視庁は当該カジノ店が暴力団の資金源になっているとみている。

 桃田選手は8日の会見で「いけないことは分かっていたが、好奇心や少し楽しんでいる自分もいた」と話した。田児選手は「やめられない自分がいた。ギャンブルが好きだった」と語った。日本を代表する選手として自覚がなさ過ぎる。

 スポーツはルールに従いフェアプレーの精神が求められる。トップアスリートは子どもたちの憧れだ。2人には猛省を促すと同時に、違法行為にはペナルティーが課せられるのは当然だ。

 2人が所属していたNTT東日本によると、同社所属の他の複数の選手もカジノ店に出入りしていたことを認めた。同社と日本バドミントン協会には徹底調査と再発を防止するため、選手教育の見直しを求める。

 スポーツ界では近年、不祥事が絶えない。大相撲は2010年に野球賭博問題が発覚した。11年には八百長問題が出て春場所を中止、同年の巡業を取りやめた。球界でも昨年から野球賭博問題が拡大したほか、元プロ野球選手清原和博被告が覚せい剤取締法違反(所持、使用)罪で起訴された。

 日本オリンピック委員会(JOC)は「人間力の向上なくして、競技力向上なし」を方針に掲げているが、掛け声倒れになっているのではないか。

 2020年に開催される東京五輪に向け、世界の注目が日本に集まっている。国際オリンピック委員会(IOC)は近年、国際刑事警察機構(ICPO)との連携や八百長排除の監視会社の設立など、違法な賭博行為の対策を強化している。今やドーピングより賭博に厳しい目が注がれていることを肝に銘じなければならない。

 事態は深刻だ。東京五輪に向け政府は、スポーツ界のガバナンス(統治)に目を光らせなければならない。スポーツ界は全ての競技団体が選手一人一人に法令順守を徹底させ、信頼回復に全力を尽くす必要がある。

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