まるで1970年代にピーター・マックスが描いた様なサイケデリックなイラスト【木造駅舎カタログ】紀勢本線24/193 紀伊有田駅

※2020年12月撮影

トップ画像は、紀勢本線紀伊有田駅。駅舎は、駅が開業した昭和15年(1940年)の建物です。駅舎正面の窓はほとんど新建材で塞がれノッペリとした外壁の奇妙な佇まいになっています。

駅舎は、下里駅(建造・昭和10年)、紀伊浦神駅(同・昭和11年)、紀伊田原駅(同・昭和11年)と同じタイプです。

この角度から見ても、駅舎というよりも窓の無い不思議な建物。駅舎前の木は2本とも桜。春の桜が咲いている写真を見ると、色彩の一切ない風景を淡い桃色の花が水彩画の様に彩って、心和むものになっていました。

※2020年12月撮影

1940年(昭和15年)国有鉄道紀勢西線が江住駅から串本駅まで開通。紀伊有田駅は、その時に開業。1959年(昭和34年)全通して紀勢本線に線路名称が改定され、その所属駅になります。1985年(昭和60年)駅は無人化。1987年(昭和62年)の国鉄分割民営化でJR西日本の駅になっています。

駅舎東側。駅舎正面が新建材で覆われる以前は、駅舎正面も同じ仕上げになっていました。こちら側の方がマトモですが、無人駅であることやメンテナンスの都合などから現状の正面になっているのでしょう。

木造駅舎ファンとしては、木造駅舎が解体撤去されて小さくて無表情な待合室だけに改築されるよりは、数段マシです。駅を実際に使う方々にはそうではないかもしれませんが。

※2020年12月撮影

駅舎の西側も原型を留めている様です。

※2020年12月撮影

駅舎ホーム側回廊の上屋・軒と共用の切妻が駅舎正面側にも反復される面白いデザインです。構内踏切から島式ホームに上がるスロープが見えます。

※2020年12月撮影

駅出入口。面白いのは、この無色の駅舎、待合室に入ると1970年代のイラストレイター、ピーター・マックスが描いたサイケデリックなイラストを思わせる装飾が広がっています。

※2020年12月撮影

2016年(平成28年)の「紀の国トレイナート2016」というイベントで地元和歌山県出身の画家松尾ゆめさんが抽象画で駅を飾ったのです。「紀の国トレイナート」は、2014年から継続的に行われています。2021年も「紀の国わかやま文化祭2021」と合流する形で開催されている様です。「train+art」で「trainart=トレイナート」ということですね。

※鉄道の撮影は鉄道会社、鉄道利用者、関係者などのご厚意で撮らせていただいています。撮影は何よりも安全が最優先。あくまでも業務・利用の邪魔にならないように、そしていつも感謝の気持ちを持って撮影しています。

(写真・文章/住田至朗)

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