蔦監督映画「黒の牛(仮)」春季の撮影を黒沢湿原にて終え、残すは台湾と来年の撮影となり改めて周りへの感謝を表した。

徳島県三好市出身の蔦監督(37)が撮影していた、「黒の牛(仮)」が地元三好市内の黒沢湿原にて春季撮影を終了し、台湾の実力派俳優で主演の李康生(リー・カンション)さん(53)が今季のクランクアップを迎えた。

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>>蔦哲一朗監督の”借耕牛”を題材とした映画「黒の牛(仮)」が徳島県三好市の黒沢湿原にてクランクインした。

世界的ダンサーの田中泯さん演じる禅僧が語る十牛図~自分とは何か

今回の撮影には舞踊家の田中泯さん(77)も主演し、作中で李さん演じる男に古屋の中で”十牛図(じゅうぎゅうず)”について語っている。十牛図とは牛とそれを探す牧人が描かれた十枚の絵と詩からなる。十枚の絵に描かれているのは逃げ出した牛を追い求める若者だが、この追い求めているのは本当の自分だったという禅の教えである。禅の教えを視覚的に教える為に使われているが、近年では新人教育の場でも見かける。借耕牛や自然との関係に模索する男にこの禅僧との出会いがどういった影響を与えるのだろうか。

音楽は作曲家であり音楽家の坂本龍一さん(70)が担当する。

始まりは京都映画企画市にて平成28年度に受賞した「黒の牛(仮)」を、3年前に坂本さんがアルバム制作時に映像作品を募集していたところへ蔦監督が送ったことだ。今回のオファーの際にその作品を覚えていた坂本さんが快く承諾し担当することとなった。

主演の李康生さんは緊張から解けた笑顔を見せ、牛の”ふくよ”との共演の難しさと楽しさを語った

李さんはクランクアップを迎えて「疲れた」と笑顔で語った。今回の撮影場所は蔦監督の地元である徳島県三好市をメイン舞台に、徳島県海陽町、香川県三豊市、高知県の四国カルストがロケ地となった。借耕牛の舞台となる自然が豊かで電柱などの現代的なモノが映像に映らない為に探した結果だ。

今回の撮影に関して「9割が牛との共演シーンでとても斬新な映画だ。この映画で牛に乗り、走り、落ちたりと多くの貴重な経験があった。」とやりがいを感じると共に映画の完成を楽しみにしていた。「スタッフの人数は30人弱と多くはないけど、団結力のあるいいチームだ。とても面白かった。」と映像に実際に映ることはないが、裏側での尽力したスタッフへの感謝も述べた。

主演の李さんと共演した牛の”ふくよ”は人懐こくみんなに愛された牛だ

牛のふくよ(3歳)が蔦監督の足に頭を擦りつけ撫でて欲しそうにすると「今日はやけに構って欲しそうだ」と言いながら腰を屈め頭を撫でていた。蔦監督は牛の田舎臭さや愚直な感じが好きだそうだ。李さんからも撮影時の取材で「まるで彼女のようにふくよに接した」と語っておりその人懐っこさから撮影スタッフやボランティアからも愛されていた。

言葉の通じない牛が共演ということもあり、細かな指示が伝わらないなど苦労したそうだ。撮影中には”ふくよ”に嫌われるようなシーンもある、そんな時に人懐っこい彼女は李さんに対しても遊んで欲しそうに寄ってきてしまい思うように撮影が進まない事もあった。李さんは近い距離にいる為ツノで突かれたり足を踏まれる事もあったと笑顔で話してくれた。

蔦監督、撮影を終えて「今は反省点が多いが、今までの日本映画にはない作品になる」

撮影現場が常に自然の中での撮影となった為、天候に左右されることがほとんどだったが撮影日程は順調に進んだそうだ。クランクアップを迎える直前の撮影では天気はあいにくの曇りだったが雲の切間の日差しを狙った。水面や草にかかった水滴がキラキラと自然に光る様子を撮影する為だ。

今回の「黒の牛(仮)」の映像は全て白黒、セリフもほとんどない作品だ。蔦監督は「日本映画にはない映画になる。おそらくイメージできないような映像となるので多くの方に興味を持ってもらえたら嬉しい。」と力強く答えた。さらに続けて「僕は俳優さん任せな監督だから主演の李さんにはとても助けられた。さらには映画撮影中にはボランティアや古屋の建築、田植えなど映像に映らないところでも協力していただいた。撮影のメインとなった黒沢湿原では貴重な動植物が多く残る、蔦監督は「今後も守ってほしいし守って行けたらと思う。」と話した。

来年2月頃に再度徳島県三好市の黒沢湿原にて降雪シーンを撮影、公開は2023年秋の予定

今回5月11日に黒沢湿原にてクランクインしてから四国内に約1ヶ月の撮影となった。次回は今年の秋頃に台湾にて撮影、来年の2月頃に黒沢湿原にて降雪を待ち冬編の撮影を残している。

映画は来年の3月頃完成し、秋頃に公開予定だ。

蔦哲一朗(37)Facebook

徳島県三好市池田町出身

主な作品一覧

・夢の島(2009年監督)

・祖谷物語 おくのひと(2013年監督・脚本)

・蔦監督ー高校野球を変えた男の真実ー(2015年監督)

・たまの映像詩集 渚のバイセコー(2021年監督・脚本)

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