「多様化するニーズに対応」 県母子寡婦福祉連合会 新理事長 松本幸子さん

松本幸子さん

 父子家庭を含む「ひとり親世帯」などへの支援に取り組む長崎県母子寡婦福祉連合会(県母連)の新しい理事長に、松本幸子氏(73)が1日付で就任した。理事長交代は10年ぶり。任期は2年間。ひとり親世帯を巡っては、貧困率の高さも指摘されている。夫を亡くし、自身もシングルマザーとして子育てをした経験がある松本氏に、支援を巡るニーズや活動の課題などを聞いた。

 -県母連はどういった組織なのか。
 1958年、長崎母子福祉連盟として発足し、83年に現在の名称に変更した。県内12の自治体に支部がある。2003年の母子寡婦福祉法改正で、それまでの「保護する福祉」から「自立支援する福祉」へと変わった。こうした変化を踏まえ、各支部が相談や就労支援などに当たっている。県母連は各地の指導者育成や相談協助員の研修に取り組んでいるほか、連絡調整機関としての役割を担っている。

 -会員のニーズは。
 経済支援の拡充や福祉医療費助成の現物給付化、学習支援、多様化する悩みへの相談援助などが挙げられる。
 コロナ禍で会員たちも収入面で大きな影響を受けた。家計のため仕事を掛け持ちせざるを得ないダブルワークの会員が多く、中にはトリプルワークもいる。それが『自分の時間を持てない』『ストレスがたまる』『子どもの勉強を見てあげることができない』などといったさまざまな悩みにつながっている。
 子どもが医療機関にかかった際の自治体からの福祉医療費助成についても、受診者側がいったん窓口で支払う「償還払い」制度だと、「立て替えるお金を出すのさえきつい」といった切実な声を聞く。また、教育に対する意識も時代とともに変化している。近年は保護者である会員も、その子ども自身も、大学や大学院まで進学を希望するケースが増えており、学習支援へのニーズも高まっている。

 -県母連の課題は。
 母子寡婦福祉法が改正された03年には県内に約7千人いた会員も、現在は900人を割り込んでいる。『会の名称が古くさい』といった声も聞き、組織活動に対する若い世代の意識も変わってきている。会員の減少と高齢化にどう対応し、活動を発展・強化させていくかが課題だ。諫早では、市内の子どもが協力店で食事ができる無料食券の配布や、会員の子どもなどを対象にした無料塾の開講など新たな取り組みが始まり、コロナ禍の約2年間で若年会員が80人以上も増えた。潜在的な入会希望をどう掘り起こしていくかが鍵だと考える。

 -トップとして、実現したいことや抱負は。
 12支部のうち、専用の事務所があるのは2カ所。各支部が事務所を持ち、そこを拠点に活動が展開できるように体制を整えたい。先人たちが国などに要望を重ねた結果、今の児童扶養手当などの支援策がある。会員同士が支え合い、助け合うことができる県母連でありたい。そして歴代の理事長の思いを受け継ぎ、副理事長や理事の力を借りながら、県母連だからこそできることに取り組んできたい。

 【略歴】まつもと・ゆきこ 諫早市出身。愛知県で結婚生活を送っていたが、長男が生後4カ月の時に夫と死別。帰郷後は一般事務の仕事を経て、母子相談員、母子自立支援員としてひとり親世帯に寄り添ってきた。県母連では理事、副理事長を務めた。

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