心肺停止…野球観戦中、娘に「体冷えた」と伝えた父倒れる 冷静なコーチら蘇生成功、父は退院し日常戻る

木村昌明消防長(右端)から感謝状を受け取った(右から2人目より)萩原拓也さん、佐藤馨介さん、茂原浩一さん=22日午後、行田市長野の行田市消防本部

 埼玉県の行田市消防本部は22日、同市和田の市総合公園内で突然倒れた傷病者に迅速な救命処置を行ったとして、中学硬式野球クラブチーム・行田リトルシニアの関係者に感謝状を贈呈した。木村昌明消防長から感謝状を受け取ったいずれも会社員で、熊谷市在住の同チームコーチ佐藤馨介(けいすけ)さん(27)と行田市在住の選手保護者萩原拓也さん(42)は「助けられて良かった」と語った。

 同本部によると、3月20日午前11時ごろ、朝から孫の野球の試合を観戦していた熊谷市の男性(79)が一緒に観戦していた娘に「体が冷えたから車に戻る」と伝えて、一人で歩いていった。その後、男性は市総合公園内のレストハウスでふらつきながら卒倒したところを目撃された。

 行田シニアの関係者が男性を発見し、連絡を受けた佐藤さんが現場に駆け付けた。男性の心肺停止を確認後、救急隊が到着するまでの間、追いかけてきた萩原さんと協力して心肺蘇生法の胸骨圧迫と野球場にあった自動体外式除細動器(AED)の操作を実施。救急隊が到着した際に男性の心拍は再開し、無事に退院して社会復帰したという。

 佐藤さんは「病院での勤務経験があり、慌てることはなかったが、助けられて良かった」、萩原さんも「AED講習を受けたこともあり、人の命を助けられて良かった」と語った。チーム代表として感謝状を受け取った監督の茂原浩一さん(58)は「今後はチームとしてAED講習の受講も検討したい」と話した。

 木村消防長は「選手には野球だけでなく、命の尊さと行動する勇気も指導してもらえれば」と話していた。

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