伊藤忠、Level4飛行を目指すティルトローター搭載新型VTOL Wingcopter 198を展示[Japan Drone 2022]

国内でもいろいろな物流実証実験などで活躍した「Wingcopter 178」の後継機種、「Wingcopter 198」 が伊藤忠商事のブースで展示されていた。

Wingcopter 198は、高速・長距離飛行の機体として定評があったWingcopter 178 に安全性の強化やオペレーションの省人化を更に進めた機体。1kgのペイロードで95km、Max 5kgのペイロードで75kmまでの距離を輸送することができる。

また、GPSやフライトコントローラー、バッテリーなどを2系統にすることで冗長性を持たせ、万が一、1系統にトラブルがあったとしても残りの1系統を利用してフライトに影響がない設計となっている。

プロペラが8枚の仕様となった新型VTOLドローンWingcopter 198。内側の4つのプロペラは角度が可変する

ほかにも、178から明らかに変わった機体デザインでわかるとおり、ティルトローター(角度が変わるプロペラ)式を含む8枚のプロペラで構成され、機体の円滑で継続的な安全飛行を支えている。内側の前後に設置されたティルトローターは、離着陸時は水平になり安定飛行と上昇スピードに貢献し、水平飛行時には前方のローターは前方を向くことで推進力として利用する。その際、後方のティルトローターは折りたたんだ「フェザーモード」となり、空気抵抗少なくプロペラが収納される。

前方のティルトローター。水平飛行時にはこのように前を向いて推進力として使う
フェザーモードとなった後方ティルトローター。電力がないので下を向いているが、水平飛行時には折りたたんだプロペラが水平になるにようにローター軸が動く

配送ボックスは従来型の卵型のものが展示機体に搭載されていたが、箱を3つ連ねた「トリプルドロップ」型の配送ボックスも搭載できるとのこと。その配送ボックスを使えば、1フライトで最大3地点に荷物を配送可能となり、長距離飛行ができるWingcopterの効率をさらに向上させることができる。

バッテリーの交換も「クイックスワップ機能」でバッグを取り出すように簡単。着陸後、すぐにバッテリー交換して再フライト…といったことも可能だ

飛行は完全プロポレスで、グランドステーションを使った自律飛行を基本とする。タブレット型の端末(Panasonic TOUGHBOOK)でフライトプランを作成し、あとは機体がプラン通りに飛行する。もちろん、標高や空域のデータベースがシステムへ統合されており、フライトプラン作成を効率的にできるようになっている。

さらに、現在開発中だが1対10などひとりのオペレーターが10機の機体の運航管理をするというシステムも作っているとのこと。この完全自律飛行のシステムやトリプルドロップ型の配送ボックスにより、物流ドローンのテーマである輸送コストを大幅に削減することができる。

配送ボックスは機体下部に搭載。卵型の流線型タイプは178から継続しているが、トリプルドロップ型の配送ボックスも装着可能

Wingcopter 198 のフライトイメージ映像。トリプルボックス搭載のようすやティルトローターの稼働などもみることができる

今後、Wingcopter 198は高度な自動飛行機能と安全性を武器にアメリカのFAA型式認証を取得すべく調整中とのことで、日本国内においてもLevel4飛行を可能とする第一種機体認証の取得を目指している。伊藤忠商事としてもこれから機体を本格導入、テストするという新型機であるが、近い将来、日本の都市部上空を目視外飛行している可能性はとても高いのではないだろうか。

▶︎伊藤忠商事株式会社

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