〈エッセンシャルワーカー応援特集〉支え支えられて奮闘 コロナ禍の日常守る

 新型コロナウイルス感染症の感染者数は全国的に減少傾向が続いている。基本的な感染対策は定着し、コロナ禍以前の社会環境に近づきつつある一方、ウィズコロナ時代だからこそ、生活基盤の維持に欠かせないエッセンシャルワーカー(社会機能維持者)の存在がより重要になっている。職務を通じ、市民の日常を支えるエッセンシャルワーカーを紹介する。

客の変化見逃さず 理容コバヤシ・理容師 小林学さん(39)

 上越市仲町2で営業している理容室「理容コバヤシ」。コロナ禍以前から理容師法に定められた衛生消毒として、蒸しタオルの煮沸消毒、カミソリなど肌に触れる器具の紫外線消毒や次亜塩素酸消毒など、安全安心を徹底してきた。

 コロナ禍に伴い、市の補助金を活用して換気機能付きの空調を整備した他、事前予約制に変更して、店内の滞在人数を調整している。

衛生消毒を徹底した店内で、手際良くはさみを動かす小林さん。幅広い年齢層の常連客を和やかな雰囲気で迎える

 父・正和さん(74)と店に立つ2代目の小林さんは業務中、手洗いを1日数十回繰り返し、清潔を維持。家庭でも帰宅と同時に服を全て着替えるなど、「外から持ち込まないよう」心掛けている。

 多くの常連客と定期的に接する仕事柄、県理容生活衛生同業者組合が県の自殺予防対策を受けて実施する「ゲートキーパー養成研修」で講師を務める。特にコロナ禍の閉塞(へいそく)感や孤独感から生じる「コロナうつ」を警戒。日頃から傾聴を実践し、ささいな変化も見逃さないよう注意を払う。

 コロナ禍前と来店客数に変動はないといい、「お客さまに支えられている」と感謝。理髪の技術を通じて、「散髪は心も体もリフレッシュするし、良い気分転換になる。内面からさっぱりしていただけるよう、これからも頑張っていきたい」と決意している。

役割や使命再認識 アイエムタクシー・営業乗務員 猪俣仁司さん(61)

 上越市内と妙高市内で通院、買い物、出張などの移動手段として、安全輸送を実践している「アイエムタクシー」(上越市大和6、牧野章一社長)。従業員と乗客の安全を最優先に、2020年1月から上越市内のタクシー会社として初めて、全従業員にマスクの支給を開始。着用を忘れた乗客にも無償提供している。全車に消毒液や飛まつ防止のビニールカーテンを設置し、社内会議で手洗いの仕方から指導してきた。

 マスクが入手困難だった当時、乗客に提供したところ「とても喜ばれた」と猪俣さん。乗務で再会した際にも感謝され、「新しい形で、お客さまとの関係性が深まった」という。

 コロナ禍に疲弊していた観光客には閑静な場所を提案。「ゆっくりできた」という喜びの声から、タクシーの役割や使命を再認識した。観光流動の復活を見据え、「『また来たい』と思っていただけるよう、もう一度受け入れ態勢を整えたい」と、観光案内の勉強に力を入れている。

対策を万全に、笑顔で乗客を迎え、ハンドルを握る猪俣さん。タクシー運転手ならではの観光案内も

 全社一丸で危機感を持った各種対策は、乗客の信頼と安心感を高め、ねぎらいの言葉を掛けられることも多かった。坂原悟専務(62)は「タクシーは安全な乗り物。安心してご乗車いただき、観光や出張で上越、妙高の地を堪能していただきたい」と願っている。

© 株式会社上越タイムス社