激戦地土砂の採掘を容認 沖縄県が業者側と和解 遺骨発見時は中断

 沖縄戦跡国定公園内にある糸満市米須の鉱山での土砂採掘計画を巡り、県は24日、総務省の公害等調整委員会(公調委)の裁定委員会が提示した、採掘事業者との合意案を受け入れると回答した。沖縄戦戦没者の遺骨が見つかった場合の採掘作業を中断するなどの条件を設けた上で、県は採掘を認める内容。事業者側は23日までに受け入れを回答しており、双方が合意した。一方、市民団体からは遺骨が土砂に混入する懸念は変わらないとして県と事業者への和解に反発もある。

 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設で、政府は埋め立てに使用する土砂の採取予定地に本島南部も加えることを計画している。遺骨の混じった土砂が新基地建設の埋め立てに使用される可能性が指摘され、沖縄戦の激戦地での遺骨の取り扱いを巡って県と事業者の主張が対立してきた。

 玉城デニー知事は24日夕に臨時会見を開き、「(合意案は)措置命令の内容をおおむね反映している」と説明した。

 その上で「県議会で議決された意見なども踏まえ、戦没者の遺骨が混入した土砂が使われることのないよう、遺族など県民の心情も踏まえ、対応する」と述べた。

 合意案は、遺骨発見時に2週間工事を中止して遺骨を収集することのほか、(1)表土を保管し、埋め戻しまでの間、いつでも遺骨調査が可能な状態にする(2)表土を剥離した範囲を農業用シートで被う(3)採掘を完了した地点の順次埋め戻しとガジュマルの植栽―なども提示している。

 採掘計画を巡り、沖縄戦遺骨収集ボランティアなどの団体は掘削を認めないよう求めてきた。こうした意見も踏まえ県は事業者に対し、採掘前に遺骨の有無を確認することなどの措置命令を出した。事業者は措置命令を不服とし、公調委に裁定申請をしていた。(塚崎昇平、安里周悟)【関連記事】
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