目前に迫る「2025年問題」 人手不足の介護業界、移民政策とどう向き合う

ミャンマー人留学生向けに開かれた介護職員の説明会=神戸市長田区

 団塊の世代が後期高齢者となる2025年、全国で約22万人、兵庫県内で約1万2千人の介護職員が不足するとされ、国は外国人材の活用促進を打ち出している。介護従事者の在留資格導入、技能実習制度の追加を進めたが、技能実習生で人手不足を補うことは法律で禁止されている。参院選を前に、中長期的な視野から適正な受け入れ体制の整備を求める声が広がっている。

 厚生労働省が介護保険事業計画に基づいてまとめた介護職員の不足見通しによると、兵庫では25年、全国で5番目に多い約1万2千人に上り、40年には全国4位の約4万5千人に達することが分かった。

 介護の現場で働く外国人は技能実習生が最多とみられ、兵庫の計画認定件数は18年度49件、19年度430件、20年度529件と増加してきた。その後、新型コロナウイルス禍で減ったと考えられるが、今春から受け入れが再開された。

 県社会福祉協議会には19年2月、技能実習生の受け入れを仲介し、支援や監督をする監理団体「ひょうご外国人介護実習支援センター」が設立された。社協では全国第1号となり、県と神戸市が県社協を支援する形で設立費用を負担した。

 同年12月に初めての技能実習生をベトナムから受け入れ、現在は33人が県内外の施設で実習している。同センターは「どの監理団体を選べばいいか分からないという声があった。公共性の高い社協なら信頼度が高い」と設立した狙いを語る。

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 ただ技能実習は本来、途上国の国民に技術を学んでもらう国際貢献の制度で、法律で「労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」と規定されている。

 にもかかわらず、厚生労働省「老人保健健康増進等事業」で実施された21年10~11月の介護事業者向けアンケートでは、実習生の受け入れ理由について、75.1%が「職員不足を解消したかったから」と回答するなど、理念と実態はかけ離れている。

 神戸・阪神間で介護職員として働く外国人の支援に取り組む「介護ミライモ」(神戸市東灘区)は技能実習ではなく、転職も可能な特定技能の在留資格による就労を支えようと活動を始めた。

 5月の説明会に参加したミャンマー人留学生の女性(26)は、コロナ禍と軍事クーデターで長く国元を出られず、4月下旬にようやく来日を果たした。「ミャンマーの生活は大変。仕事もなくなった。だから日本で働きたい」

 ミライモの担当者は「介護職員が足りず、事業者も外国人も互いに求めているのにスムーズに結ばれていない。日本で仕事をして良かったと思える環境づくりが必要」と話す。

■農業や漁業、製造工場も人材難 技能実習制度は「法の正義に反している」

 人手不足に陥っているのは介護業界だけではない。兵庫県内でも農業や漁業、製造工場などさまざまな現場で、外国人労働者はなくてはならない存在となっている。

 兵庫労働局によると、県内の外国人労働者は4万5558人(2021年10月末時点)で、日本人の配偶者や永住者など身分に基づく在留資格▽技能実習▽留学生らの資格外活動▽専門的・技術的分野の在留資格-がほぼ4分の1ずつを占めている。

 技能実習を巡っては、実習生に対する暴行事件、違法残業の強制などが問題となっており、「数々の人権侵害が続発しており、重大な問題」などとして、廃止や抜本的見直しを訴える政党もある。

 NPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」(東京)の鳥井一平代表は6月1日、神戸・三宮の街頭に立ち「技能実習は人手不足を補おうとするうその制度。法の正義に反している。困っている現場で、人間が人間として働くことができるまっとうな外国人労働者受け入れ制度が必要」と訴えた。

 その上で「実習生を使い回して事業を延命させたとしても担い手は育たず、地域社会は荒廃していく」と指摘し、「参院選の候補者には移民政策を考えてほしい」と呼び掛けた。(高田康夫)

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