核禁会議閉幕 長崎の若者ら、核軍縮の最前線に触れ「帰ってからが本番」

締約国会議を傍聴し、「ウィーン行動計画」の採択を見守る山口さん(左)=ウィーン、オーストリアセンター

 短くも、濃密な3日間が終わった。オーストリア・ウィーンで開催された核兵器禁止条約の第1回締約国会議。日本からも平和活動に取り組む大学生らが渡航し、会議を傍聴したり、事前のイベントで核廃絶を訴えたりした。若者たちの目に「核軍縮の最前線」はどう映ったのか。
 締約国会議へのオブザーバー参加を見送った日本。「私たちが参加し、日本の存在感を示そう」。首都圏を中心に活動する学生団体「KNOW NUKES TOKYO(ノー・ニュークス・トーキョー、KNT)」の共同代表で被爆3世の中村涼香さん(22)はそう考え、外務省の「ユース非核特使」としてウィーンを訪れた。
 締約国会議前日に開催された「核兵器の非人道性に関する国際会議」。日本政府の条約不参加について「残念だ」と述べると会場から拍手が起きた。「勇敢だった」と声をかけてもらったが、内心は複雑だ。「ウィーンでも身内(日本政府)に対応を求めなければならないのか…」
 閉幕日の23日。議場にいたKNTメンバーの大学2年、山口雪乃さん(19)=長崎市=は動画を撮る手を止め、立ち上がって拍手をした。歴史的瞬間に立ち会えた喜びを感じていた。会期中は各国政府に面会。核被害者支援への発言を求めると好意的に受け止めてくれた国も。「日本の若者として役目を果たせた」。そう言って山口さんはうなずいた。
 大学生らが核情勢を学ぶ「ナガサキ・ユース代表団10期生」の福永楓さん(24)=長崎大大学院2年=も締約国会議を傍聴。「日本がいない分(核実験が繰り返された)カザフスタンの存在がより目立っていた」と見る。
 北大西洋条約機構(NATO)加盟国で「核の傘」に依存するオランダなどもオブザーバー参加した今回の会議。「条約の賛否にかかわらず、参加と発言の機会を与えられているのが革新的だった」と振り返る。「条約は(各国の参加者がそれぞれの国に)帰ってからが本番。核共有などについて市民と議論する場をつくりたい」。福永さんは力強く言った。
 高校生平和大使2人も渡航。長崎に残った大使らも情報発信でサポートした。現地で活動する大使の写真などをインスタグラムに投稿。担当した元大使の大澤新之介さん(18)=鎮西学院大1年=は「日本政府や核保有国は後ろ向きだが、いずれ効力を発揮できるような条約になってほしい」と期待した。


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