締約国会議閉幕

 ウィーンには日本の大使もいるんだから、今からでも来ればいいのよ-。会議の様子を伝えるテレビの画面が外国人女性のこんな言葉を伝えていた。“唯一の戦争被爆国”の政府に対する世界の「?」をそのまま物語っている気がした▲ウィーンで開かれた核兵器禁止条約の第1回締約国会議が閉幕した。日本政府はこの会議に背を向けたままだ。〈会議の前日に広島出身の大学生が現地で直談判しても、日本政府はかたくなに拒否した〉と、現地発のリポートにあった▲広島・長崎の市長が被爆地の声を発信した。被爆者たちは核の恐怖を証言し、核なき世界への願いを切々と訴えた。日本の若い世代も決意を語った。それらが印象的であればあるほど際立つ日本政府の不在▲オブザーバー参加した非加盟国の発言が興味深い。「条約には加盟できないが、核なき世界の実現という目標は完全に共有する」と述べたのはドイツの担当者。ノルウェーは「すべての国と建設的な対話を模索する」▲リポートはこう伝えている。〈…考え方やアプローチに違いがあっても、オブザーバー参加各国のスピーチにも変わらぬ拍手が送られた〉。さぞ歯がゆい思いでキーボードをたたいたに違いない▲日本はこの先も橋渡し役を自称していられるだろうか。77回目の夏が来る。(智)


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