偏頭痛治療の原因物質に直接作用する新薬が発売…効果は 神経外科医に聞く実績や投与の対象

偏頭痛が起きる原因物質に直接作用し、働きを阻害する治療薬

 重い頭痛で仕事や日常生活への影響が大きい偏頭痛。昨年、偏頭痛を起こす原因物質に直接作用して予防する抗体医薬が相次いで発売された。福井県済生会病院脳神経外科副部長の山﨑法明医師(53)は「予防治療において画期的な薬」と話し、従来の治療法で効果を得られなかった患者にとって希望の光となっている。

 偏頭痛の特徴は▽ズキンズキンと脈打つように痛む▽体を動かすと痛みが増す▽光や音に過敏になる▽4~72時間程度痛みが続く―など。10~40代に目立ち、特に女性に多い。山﨑医師によると、同病院の頭痛外来を受診する患者のうち「統計は取っていないが5、6割が偏頭痛」だという。

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 偏頭痛は、刺激を受けた脳内の三叉(さんさ)神経から「CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)」という物質が過剰放出され、血管表面の受容体と結合して血管が広がり、炎症を引き起こし、痛みを発生させるとされている。山﨑医師は「偏頭痛は病気。完全に治すことはできないが予防的な治療はできる」と強調する。

 従来の予防治療は、抗てんかん剤や抗うつ剤、心臓の薬などを一定期間、毎日服用するというもの。偏頭痛の原因物質に直接働くものではなく、効果が不安定、薬の副作用で治療を継続できない、効果が出るのに時間がかかるなどの課題があった。一方で昨年発売された3種類の薬は偏頭痛に特化したもの。一定期間、月に1度注射して投与する。「エムガルティ」と「アジョビ」はCGRPの働きを阻害し、「アイモビーグ」は受容体とCGRPの結合を妨げ、発症回数を少なくしたり、痛みの程度を軽くしたりする効果が期待される。

 注意しなければいけないのは、誰でも投与できるわけではないことだ。厚生労働省は指針で投与対象を▽月に複数回、頭痛がある▽さまざまな治療をしていても日常生活に支障がある▽従来の治療で十分な効果を得られない―など重度の偏頭痛患者に限定している。

 同病院では今年4月までに70人弱に投与。ほとんどの患者で効果が出ているという。保険適用の対象となっているが、3割負担で1本1万数千円と高額だ。それでも患者からは「仕事を休んだり、日常生活に支障をきたしたりすることが減るのであれば費用対効果はいい」などの声が上がっているという。

 山﨑医師は「新しい薬は今まで以上に効果が期待できる。治療の選択肢の一つにしてほしい」と話していた。

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