与野党ともに“不安解消に懸命” 長崎県知事選のしこり・自民/共闘足並み乱れ・野党 2022参院選長崎

JA職員を前に演説する山本氏=長崎市出島町、県農協会館(写真右)、 総決起集会で西岡氏(右奥)らと気勢を上げる白川氏(左奥から2人目)=長崎市尾上町、出島メッセ長崎(写真左)

 参院選長崎選挙区(改選数1)では、自民は保守分裂となった2月の知事選のしこりを抱え、野党も候補を一本化できず共闘の足並みは乱れている。与野党ともに不安解消に懸命だ。
 22日の公示日。長崎市の出島表門橋公園で第一声を上げた自民新人の山本啓介候補(47)は選挙カーに乗り込むと、目と鼻の先にある県農協会館に向かった。駐車場で車を降りて正面玄関まで走り、職員たちと握手を交わした。演説は約3分。農業振興を約束し支援を呼びかけると、拍手が起こった。
 県内JAグループの政治団体「県農政連」は自民の有力支持団体。だが知事選では党県連が推した新人ではなく、当時の現職を推薦。辻田勇次委員長は選対本部長を務めた。結果、僅差で現職が敗れ、当時県連幹事長だった山本氏に対し「ぐちゃぐちゃにされたと思っている人は少なくない」(JA関係者)。
 今回、農政連は山本氏を推薦したが組合員の温度差は否めない。ただ、ある幹部は「いくら不満があっても他党を利する理由はない。投票に行かない人も出てくるだろう」と話す。
 県連は各地で「ノーサイド」(徳永達也県連幹事長)の演出に力を入れる。長崎、諫早、佐世保各市で開かれた公示日の出陣式には、知事選で当時の現職を支援した県議の大半が姿を見せた。山本氏の後援会長の金子原二郎農相も「圧倒的な支援をお願いしたい」と挙党態勢を求める。
 複数の党関係者によると、前知事の地元の島原半島には今なおわだかまりが強く残るものの、次の衆院選をにらみ別の力学も働いているようだ。今月発表された衆院小選挙区の区割り改定案では、山本氏の出身地の壱岐市が島原半島と同じ新2区に入った。同半島を含む現2区の現職は加藤竜祥氏。「山本を応援すれば、次の衆院選で山本の票が加藤に入る。山本を推すことはやむを得ん」(島原市議)。そんな思惑も見え隠れする。

 25日夕、長崎市内であった立憲民主新人、白川鮎美候補(42)の総決起集会。壇上には党代表の泉健太氏、連合会長の芳野友子氏らと並び、国民民主県連代表の西岡秀子衆院議員(長崎1区)の姿があった。大票田の長崎市で圧倒的な強さを誇る西岡氏との共演。終了後、泉氏は記者団に「いよいよ(野党の)一体的な取り組みが進んでいく。弾みになる」と笑顔を見せた。
 過去2回の長崎選挙区は、共産を含む野党が「反自民」の旗印の下で候補を一本化。前回は白川氏が自民候補に敗れたとはいえ、約3万4千票差と善戦した。「野党共闘」は一定効果をもたらしたとされる。
 ところが今回は様相が異なる。立民県連は、連合の方針や国民県連への配慮から、共産新人の安江綾子候補(45)との候補一本化に積極的に動かなかった。一方、国民県連も党本部が立民との連携を見送ったため白川氏を推薦せず、政党と労働団体でつくる選挙協力の枠組み「7団体懇話会(7者懇)」で支えるとした。
 だが公示日に佐世保市であった白川氏の出陣式に国民の市議の姿はなかった。県が進める石木ダム建設やカジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致などを巡り、白川氏と考え方に乖離(かいり)があるためという。共同通信の序盤情勢調査でも、国民支持層のうち白川氏を支持するのは5割弱にとどまり、2割強は日本維新の会新人の山田真美候補(50)に流れている。
 25日の総決起集会後、記者団の取材に応じた連合長崎の髙藤義弘会長は期待を込めてこう語った。「7者懇一丸の取り組みはこれから浸透する。(小選挙区と比例復活で県内の野党候補3人が当選した昨年10月の)衆院選の票が得られれば必ず勝利できる」

 長崎選挙区にはいずれも新人でNHK党の大熊和人氏(52)と政治団体「参政党」の尾方綾子氏(47)も立候補している。


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