テララボ、歴代の「TERRA Dolphin」展示。災害対策DX研究開発のこれまでとこれから[Japan Drone 2022]

災害は起きたときから刻々と変わる状況を一刻も早く情報収集し、把握し続けることが二次・三次の災害を防ぐことになる。 災害時に短時間で長距離無人航空機を飛行し情報収集、災害状況を俯瞰できるクラウド地図を3時間以内に提供する広域災害システムの研究開発をしているのがテララボだ。

災害時に作成する「共通状況図」のイメージ。道路データ、河川、住宅、山間部等高線などの地図データに「TERRA Dolphin」で取得した3次元データやリモートセンシングデータを重ねて洪水による浸水エリアを可視化。これを無人機だからできる迅速なデータ化と構築したシステムによるクラウド化によりスピードと正確性が重要視される災害時の意思決定に貢献する。実際の南相馬市のクラウド共通状況図サンプル(2022.03.17)をコチラから見ることができる ※災害状況はありません

ひときわ大きなブースは会場入り口正面に位置しており、エスカレーターで入ってくる途中で目に入る。 ブースにはテララボが開発する長距離無人航空機「TERRA Dolphin」のプロトタイプから始まる歴代の機体が展示されていた。

4サイクル120ccエンジンを搭載した「TERRA Dolphin 4300」のプロトタイプ(さまざまな飛行機能の検証)
2サイクル80ccエンジン搭載の「EFIモデル」。航空機のエンジンは高度によって燃焼の噴射の仕方を変える必要があるが、EFIによって噴射の電子制御をしている(長距離化・高効率化の検証)
日本上空のジェット気流(偏西風)を突き抜けた先の安定した高高度空域に到達するためにジェットエンジンを搭載した「ジェットモデル」。写真手前に展示されているのがジェットエンジンのモック
ジェットモデル機体後部。ジェットエンジンの噴射口がのぞく
水素燃料電池搭載のVTOL(垂直離着陸)型。TERRA Dolphinは当初からVTOL機能搭載を前提として設計されているため違和感はない
TERRA Dolphin 8000 は全幅8mになる巨大な機体。ペイロードは40kg、航続時間は20時間にもおよぶ

東日本大震災のときにアメリカ軍の無人航空機グローバルホークが情報収集に飛行していたことを知ったテララボ代表の松浦氏が「なぜこのようなシステムが日本にないのか、次世代のシステムはどのようにあるべきか」考え、必要なものを逆算して設計した。 衛星通信アンテナや観測装置の小型化、可搬性の高さ、固定翼でも垂直離着陸できる機能、高高度も飛べるようにジェットエンジンの搭載。 現状ではまだ1機の中にすべてを収めることが難しいのでさまざまな目的・タイプのTERRA Dolphin を開発しているという。

テララボの災害対策DXの取り組みイメージをストーリー化したショートムービー「空飛ぶイルカ」が公開中

テララボ代表の松浦氏に開発の苦労を尋ねると、

展示機よりも前の世代の試作機がたくさんあり墜落もたくさんしている。 固定翼機はマルチコプターと違って飛び続けて検証しなくてはならないので、制御装置の制御則と墜落との長い戦いだった。 今は20,000m上空も飛行するTERRA Dolphin が法的にどのカテゴリがいちばん安全に飛べるのかという制度面に課題を感じている。 有人航空機の空域では有人航空機の航空管制とやり取りすることになるので、我々は無人航空機だが有人航空機のシステムをきちっと運用できるように開発する必要がある。 現段階では無人航空機として開発も進めつつ、有人航空機で一部自動化や無人化をすることで検証している。 とのこと。高高度空域や長距離飛行を想定した機体の運用ならではの苦労が絶えないようだ。

また、テララボの災害対策DXの実現を想定した開発は「ドローンだけではなく航空も宇宙もさまざまな空域を使う方法がある(松浦氏)」という考えのもと、あらゆる手段をつかってあくまで地域の災害対策にいちばん最適なものを開発している。 そういった意味では、開発ありきではなく、地域と対話して実装モデルをつくっていくということがテララボの目指すものだ。

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