「平和宣言」過去73回分を収録 「ナガサキの願い」発行 早稲田大学出版部

「『平和宣言』全文を読む―ナガサキの願い」(早稲田大学出版部編)

 長崎原爆の日(8月9日)の平和祈念式典で長崎市長が読み上げる平和宣言。過去73回の宣言を収録した「『平和宣言』全文を読む-ナガサキの願い」(早稲田大学出版部編)が発行された。ロシアのウクライナ侵攻で核の脅威が高まる中、谷俊宏編集部長(63)は「被爆の実相や『長崎を最後の被爆地に』との市民の願いが込められた平和宣言は、私たちの歩むべき道を照らしてくれる」と出版の意義を語る。
 平和宣言が8月9日に初めて正式に読み上げられたのは原爆投下から3年後の1948年。朝鮮戦争の影響で式典が開かれなかった50年を除き、2021年の宣言まで同書に収録した。原爆犠牲者の慰霊と核兵器廃絶、恒久平和の実現を基調に、過去の歴史認識や国内外の社会情勢を踏まえ「ナガサキの願い」を世界に発信してきた歩みを見ることができる。
 同書は、社会が直面する課題解決に向けた「知」を共有しようと20年12月に刊行した「早稲田新書」シリーズの12作目。核兵器禁止条約第1回締約国会議を前に、2月に「ヒロシマの祈り」を発行した。「被爆の実相を理解するには広島、長崎を合わせて知る必要がある」。ロシアのウクライナ侵攻が続く中での編集作業となった。
 各年の宣言に合わせ、長崎新聞の協力を得て、8月10日付朝刊や9日付夕刊の1面に載った記事の見出しを掲載。田上富久長崎市長へのインタビュー記事も収録し、市長は「3度目の核兵器使用はあってはならない。『長崎を最後の被爆地に』という言葉が重要な意味を持つ」などと語っている。
 長崎大核兵器廃絶研究センターの吉田文彦センター長が論考を、芥川賞作家で元長崎原爆資料館館長の青来有一さんが前書きを担当した。
 谷氏は、長崎独自の「起草委」で市長と被爆者、市民の代表らにより練り上げられた宣言から「『私たちの平和宣言なんだ』との市民の思いがストレートに伝わってくる」と評した。
 新書判、260ページ。990円。問い合わせは早稲田大学出版部(電03.3203.1551)。


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