28歳女性自衛官「誰かのために」、入隊きっかけは東日本大震災 10kmランニングに重機操縦…志胸に訓練

ショベルカーに乗り込む柑子木三千保さん=福井県鯖江市吉江町の陸上自衛隊鯖江駐屯地

 ブルドーザーやホイールローダー、油圧ショベルカーなどの土木重機を自分の手足のように操り、地面を掘削し橋や道路を造成する。地味な訓練に見えるが、陸上自衛隊の重要な任務だ。福井県の鯖江駐屯地の重機操縦手、柑子木三千保(こうじき・みちほ)さん(28)=京都府出身、福井県鯖江市=は、求められた規模の工事を限られた時間内に正確にこなすため毎日、腕を磨く。

 「地面の状態は現場次第」。雨の後はぬかるみに重機が沈み、スタックする恐れもある。大量の土を一度に運ぶとリスクが増すため、最適解を素早く判断しなければならない。「うまくいかず、悔しい思いをしたことは数え切れません」。思い通りに作業ができたときは何よりうれしいという。

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 自衛官の朝は早い。午前6時に起床後すぐに迷彩服を着込むと、1分後には隊舎前に整列する。「点呼、異常なし!」。班長を務める柑子木さんは、班員が全員、健康な状態で集合したことを当直者に報告。日中は5~10キロをランニングするなどして体力をつけ、重機の整備にも余念がない。

 自衛官を志願したきっかけは東日本大震災。高校2年のとき、がれきだらけの被災地で自衛隊が懸命に救助・復旧活動する姿をテレビで見て、胸を打たれた。「私も誰かのために頑張れる人になりたい」。大学卒業後の2016年4月、陸自に入隊した。

 国民の人命と財産を守るため、重機の操縦は必要不可欠。想定される敵の侵略に対処するための陣地を造るほか、自然災害や遭難者救助などにも役に立つが、被災地での活動経験はまだない。「派遣される機会がないのは悪いことじゃない。だって災害は起きない方がいいですから」。屈託のない笑顔をみせながら「人の役に立ちたい」という志を胸に、きょうも重機のレバーを握る。

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