円安でのつみたてNISA・iDeCoの考え方、選ぶべき投資信託とは?

日本は急激に「悪い円安」が進んでいるといったニュースを目にする機会が増える中、不安に感じる方も少なくないでしょう。今回は、「円安」が資産形成にどのような影響を及ぼすのか、具体的にどのようなアクションを起こすべきなのかを解説します。


そもそも円安とは?

スーパーに並んだ商品の中には、外国で生産されたものもあります。スーパーでは、消費者が喜びそうな商品を外国から仕入れ、日本で売るわけですがその支払いをする際の通貨の交換レートのことを「為替」といいます。この為替は需要と供給などの関係により、日々変動します。

例えば為替が1ドル110円いう日に肉を1,000ドル分仕入れたとしましょう。日本円で11万円の支払いです。またある日の為替は1ドル100円だったとします。同じように肉を1,000ドル分仕入れると、日本円では10万円の支払いで済みます。一方為替が1ドル120円の時に肉を仕入れると12万円の支払いになります。つまり為替が変動すると、実質支払う日本円の額が変化するのです。

円高円安は、決まったレートを指すのではなく、ある基準から見て円高だ、円安だと表現します。先ほどの例だと1ドル110円で買っていたのに、あるとき1ドル100円になったとなると、かつてよりも少ない金額でものが買えるので、「円の購買力が強くなった」すなわち円高といいます。11万円の予算で1000ドル分の肉しか買えなかったのに、今は1100ドル分肉が買える、これは円の力が強くなったからなのです。だから「円高還元セール」などが行われたりします。

一方1ドル110円だったものが120円になると、よりたくさんのお金を出さないと外国からものが買えない状態になります。円の購買力が弱くなったことを円安と呼びます。日本はたくさんの商品を外国から輸入しているので、円安になるとものの値段が高くなるのは、仕入れる時の為替レートが大いに関係しているというわけです。

円安にはメリットもデメリットもある

肉を海外から仕入れる場合、円安は私たち消費者にとってはデメリットです。同じ金額で買える量が少なくなるのですから、ものの値段が上がります。一方商品を外国に売っている人にとっては、円安はメリットです。同じ商品を売るのに100円で売れるより120円で売れた方が儲かるからです。つまり、円安にはメリット、デメリット両面があり、どのサイドからこの局面を見るかによって変わります。

かつて日本製品は海外からの需要が多く、たくさんのものが売れました。製造業が儲かり、雇用を生み、賃金も上がったので円安は好景気というシナリオがありました。しかし、最近は日本製が必ずしも諸外国に爆売れするわけでもなく、円安だから景気が良くなるというわけでもありません。特に今回の円安は、利上げをしたアメリカの通貨「ドル」に世の中の人気が集まった結果、ドルの価値が上がり、日本の円の価値が下がっている状況です。また日本は資源の多くを輸入に頼っていることから、円安が資源の値上がりに拍車をかけ、物価が上がっています。景気がなかなか良くならない日本にとって、今の円安は「悪い円安」なのです。

実際自国通貨の価値が下がるのは、良いことではありません。経済制裁を受けているロシアのルーブルのように、通貨の価値が下がることは国としての経済活動が止まってしまうことを意味しますから、極端な円安は好ましくないのです。

円だけを持っていてはいけない

では投資の側面から見ると円高、円安はどう影響するのでしょうか?

例えばFXなど「通貨」そのものに投資をする場合、円高で仕入れて、円安で売れば儲かります。1ドル100円で仕入れて、1ドル120円で売れれば1ドルにつき20円儲かるという単純な取引です。もちろんFXならば、ほかにも様々な投資手法を使えるので一概には言えませんが、単純な取引だけを考えれば、急激に円安が進む今は、外貨を仕入れるタイミングではないともいえます。

FX投資をしている方は、常に為替の動きを見て売買のタイミングを伺っているかと思いますが、銀行に言われるままに外貨預金をしてずっと持ちっぱなしだったという方は、いま円に換えるタイミングかもしれません。これまではどちらかというと円高傾向が続きましたから、20年前の為替レートに戻った今、やっとチャンスが巡ってきたという方もいるでしょう。過去20年は低金利の時代でしたから、ドルでの金利より為替が円高に向いたことによる為替差損を抱えていた人は、やっと今為替差益に転じているかもしれません。

外貨預金などをしている方に、その理由を尋ねると、多くの方が「資産を円だけで持っているリスク」をお話されます。確かに、世界経済の発展の恩恵を受けるには、円だけで資産を持っておくのはリスクといえます。しかしその場合、投資をするのは通貨そのものではなく、経済成長すなわち株式です。

選ぶべきはどんな投資信託?

為替レートはシーソーのように上がったり下がったりします。一方が上がれば、一方が下がります。この上がり下がりは、交換レートの変動なので、ここからなにか付加価値が生まれるわけではありません。これを「ゼロサム」と表現したりします。しかし株式に投資をすると、その企業の成長の恩恵を受けることができます。私たちは、暮らしをもっと便利にしてくれる企業、よりよいサービスを提供する企業に投資をしますから、その企業の成長は巡り巡って私たちの日々に豊かさをもたらします。これを「プラスサム」と表現します。

投資信託を用いることも、プラスサムの株式投資のひとつです。投資のプロに、世界の企業を厳選してもらい、その利益の分配を私たちは受け取ります。もっともっと明日は良い世界を作ろうとしている大きなエネルギーに投資をすることが、自分の資産を守り育てることにつながります。円安だ、円高だと為替レートは常に変動しますし、株価の変動も予測不可能なので、積み立てでコツコツ投資をします。

外貨預金を塩漬けにしていた方は、円転して今度は世界の株式市場に投資をする投資信託などにお金を振り向けてみましょう。その際は、iDeCoやつみたてNISAといった税制優遇の仕組みを使いましょう。

現在iDeCoやつみたてNISAをしていて、投資期間もまだまだ十分とれるという方は、ご自身の投資先が世界経済の恩恵を間違いなく受けられる投資信託なのかを確認します。具体的には地球にまるごと投資するバランスファンドなどが選択肢です。しっかり選んだら、ぶれることなく投資を継続します。

投資において最も避けるべきことは、「積み立てをやめること」です。やめてしまっては、利益をうけるチャンスを失います。足下では、円安による生活コストの上昇が懸念されます。従って、これからも投資が継続できるよう家計を見直し、円安を乗り切る対策をとることも大切です。

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