博報堂教育財団こども研究所「子どもの体験と認識に関する年次定点調査」 2019年→2021年結果を発表

コロナ禍で子どもたちの体験・人との接触が大幅減。一方でデジタル利用が進み、ネット意識も大きく変化。

2022年6月27日

公益財団法人博報堂教育財団の調査研究機関、こども研究所では、2019年から「子どもの体験と認識に関する年次定点調査」を行っています。本調査は、博報堂教育財団こども研究所の「子どもは体験を通して自ら成長する主体的な個である」という考えに基づき、「体験」を起点に、体験を通して形成される「価値観」「自己認識」「環境認識」「心の状態」を、時系 列で把握するものです。2021年で調査スタートから3年目となりました。ちょうどこの3年の間に世界はコロナ禍に見舞われ、日本の子どもたちをとりまく環境も大きく変化するなか、子どもたちの体験や認識にも大きな変化が見られました。

【調査概要】
◆調査対象:小学校4年生~中学校3年生の男女1,200人
◆調査手法:インターネット調査
◆調査時期:2021年10月29日~11月22日(21年調査)
◆19年、20年の調査概要は文末参照

2019年→2021年の主な変化トピックス

家庭や学校以外での体験が軒並み減少

・これまでに体験したことでは、この2年で体験率が減少するものが多いなかで、特に家庭や学校以外でのオフライン/対面型の体験の減少が目立ちました。→詳細は〈トピックス①〉参照

人との接触が軒並み減少

・ふだん接している人では、この2年で接触率が減少するものが多いなかで、特に「同じ学校の下級生/上級生」など“異年齢の子ども”や、「親せき」「学校外のコーチ・先生」など家庭や学校以外で接する“第三の大人”との接触が減っていることがわかりました。→詳細は〈トピックス②〉参照

日常のデジタル/ネット利用が進むなか、ネットに対するポジティブな意識が増加


この2年で「スマホ」「タブレット」等のデジタル機器の使用率が軒並み増加。「動画視聴」などでの利用が進むなかで、ネットに対するポジティブな意識が増加していることがわかりました。→詳細は〈トピックス③〉参照

〈トピックス①〉家庭や学校以外での体験が軒並み減少

家庭や学校以外での体験が減少
「これまでに体験したこと」のうち、スコア(体験率)がこの2年で有意に変化した20項目中、14項目がスコアの〈減少〉となりました。特に、家庭や学校以外でのオフライン/対面型の体験項目の減少が目立ちました。

好きな体験・大切な体験が減少
「好きな体験」「大切な体験」(いずれも体験者ベース)も軒並み減少しました。体験率が下がるとともに好き率・大切率が減少するものが目立ちます。コロナ禍で行動が制限され、家庭や学校以外での体験機会が減ることで、好き・大切といった気持ちが動く機会も減っていることがうかがえます。

〈トピックス②〉人との接触が軒並み減少

● ”異年齢の子ども”や“第三の大人”との接触が減少
「ふだん接している人」で、スコア(接触率)がこの2年で有意に変化した12項目中、11項目がスコアが〈減少〉となり、人との接触が減っていることがわかりました。特に「同じ学校の下級生/上級生」といった“異年齢の子ども”や、家庭や学校以外で接する「その他の親せき」「学校外のコーチ・先生」といった“第三の大人”との接触が減っています。

● ”異年齢の子ども”や“第三の大人”は、好き率、あこがれ/尊敬率も低下
接触率が下がった「学校外のコーチ・先生」は、好き率(接触したなかで好きな人)、あこがれ/尊敬率(接触したなかであこがれ/尊敬する人)も減少、「親せき」「同じ学校の上級生」も好き率が減少しました。

父母へのあこがれ/尊敬率は20年→21年で増加
一方で、「父母」に対するあこがれ/尊敬率は20年から21年で有意に増加しました。
(接触率20%以上であこがれ/尊敬率が増加しているのはこの2年の間で父母のみ)。コロナ禍の影響で人との接触が減り、人間関係が狭くなる一方で、在宅で一緒に過ごす時間が増えた父母との関係は、より濃くなっていることがうかがえます。

〈トピックス③〉日常のデジタル/ネット利用が進むなか、ネットに対するポジティブな意識が増加

デジタル機器の使用率が軒並み増加
この2年で「スマホ」「タブレット」等のデジタル機器の使用率が軒並み増加しました。

動画視聴が増加
「情報機器でみているもの」では、「テレビでユーチューブなどの動画サービスをみる」など、動画視聴サービスの利用が増加しています。

ネットに対するポジティブな意識(好き、大切、やりたいと思うことはできている等)は大幅に増加
家庭や学校でデジタル/ネット利用が進むなかで、「ネット上の生活」に対するポジティブな意識は、この2年で増加しています。

「子どもの体験と認識に関する年次定点調査」調査概要

◆2021年
調査エリア:全国
調査対象者:【子ども調査】小学4年生~中学3年生の男女:1200人
割付:【子ども調査】〔1学年の男子100人+女子100人〕×6学年

調査実施時期:2021年10月29日~11月22日
調査手法 :インターネット調査(調査パネル:マクロミル)
企画分析 :博報堂教育財団こども研究所
実施集計 :株式会社H.M.マーケティングリサーチ

※「子ども調査」に回答した子どもの保護者1200人を対象にした調査も同時に実施。

◆2020年
調査実施時期:2020年10月26日~11月16日

◆2019年
調査実施時期: 2019年11月20日~12月4日

※2019年・2020年調査は、調査実施時期以外は、上記と同様の設計で実施。

博報堂教育財団こども研究所について

【公益財団法人博報堂教育財団】

博報堂教育財団は、児童に対する国語教育と視覚・聴覚障がい者に対する教育を助成し、あわせてその活動に関する調査研究を行うことで、児童及び青少年の健全な人間形成に寄与することを目的に、1970年に設立されました。
財団設立時から続く児童教育の実践者を顕彰する「博報賞」をはじめ「児童教育実践についての研究助成」「教職育成奨学金」など「子ども・ことば・教育」を領域とした多様な活動を行っています。

【博報堂教育財団こども研究所】

独自の調査や実験的な取り組みから 子どもたちの持つ「ことばの力」「未来を生きる力」に関して新たな発見を行い、 広く教育界のみなさまと共有することで、児童教育の進化に貢献することを目的としています。