空飛ぶ救急隊 二管本部仙台航空基地の新人機動救難士2人 現場任務に向けて訓練を重ねる

海難事故の最前線で救助活動を行う、海上保安庁の機動救難士です。4月に仙台航空基地に配属された2人の新人。訓練の日々に密着しました。

仙台航空基地機動救難士安発匠さんの訓練「下がってきたぞ安発!上げろ水位!」
仙台航空基地機動救難士宮島祥さんの訓練「休憩場所ちゃうぞ!」「休むな!」

宮城県名取市閖上の港に響く男たちの声。この日、第二管区海上保安本部仙台航空基地の2人の新人機動救難士が訓練を行っていました。
千葉県出身の安発匠さん(26)と、埼玉県出身の宮島祥さん(29)です。3月まで、潜水士として活動していましたが、その素質が評価され、4月に機動救難士に任命されました。
仙台航空基地機動救難士安発匠さん「内容一つひとつが格段にレベルアップし、今まで潜水士としてやってきた知識やレベルでは、到底追い付かないレベル」
仙台航空基地機動救難士宮島祥さん「知識や体力、判断力、全てが求められているので、一つひとつの訓練が潜水士の時と比べて、かなり高度というか難しいものばかり」

”空飛ぶ救急隊”の訓練

機動救難士は潜水士の中から選抜され、海での事故や船内で急病人が発生した場合、ヘリコプターで出動し救助や救命活動を行ういわゆる空飛ぶ救急隊です。
東北の海を管轄する二管本部には、仙台航空基地にのみ9人が配置されています。2021年1年間で51件出動。常に危険と隣り合わせの現場。人命を守るため、厳しい訓練を積み重ねます。

ロープを使ったレンジャー訓練。崖での救助を想定し、途中でロープを継ぎ足して降下し再び上がってくるという想定です。
安発さんが挑戦。いかに迅速にロープを継ぎ足せるのか、そして安全確保のため体を支えている器具を継ぎ足したロープにうまくかけ替えることができるのかがポイントです。安発さんは約15分でクリアしました。

安発匠隊員

続いて宮島さん。思うように体を支えているロープをかけ替えることができません。
「宮島あと何分かかるの?」「あと3分!」
「3分?本当に間に合うのか3分で?」「間に合わせます!」

宮島祥隊員

熟練した隊員なら8分30秒ほどでクリアできる訓練ですが、宮島さんは30分以上かかってしまいました。1分1秒を争う海難事故の現場。
機動救難士は2人1組での出動が基本です。そのため、一人ひとりが素早く、適切な行動を取らなければ、救える命が救えなくなってしまいます。
仙台航空基地機動救難士宮島祥さん「これがもし現場だったら、私は上ったり下りたりできず、どこかでそのままになって、そのままだったと思います」

訓練の中でも最も過酷とされる潜水訓練を迎えました。海でおぼれたダイバーを捜索し、救助するという想定です。安発さんと宮島さん、2人で挑みます。濁った水の中、ダイバー役の先輩隊員を発見、ロープを使って岸壁の上へ引き上げます。しかし。
「上げますよ!」「よし!」「1、2、3!」「確保!」「詰める!」
「おい!落としてるぞ要救!(要救助者)」

2人で挑む潜水訓練

要救助者の体重を支えることができず、引き上げる直前で海面に取り落としてしまいました。
先輩隊員A「何で落としたの要救(要救助者)を?要救(要救助者)は物か?」
先輩隊員B「残念でしかないっていうか、もはや救助活動ではなかった。想定訓練した意味なし」
仙台航空基地機動救難士宮島祥さん「実力不足をどれだけ自分で予習したり、今までのことを復習して次につなげられるかというところだったが、それがまだ全然できていなかった」
まだまだ学ぶことばかり。訓練は続きます。

崖での過酷な訓練

以前、基地の中で行ったレンジャー訓練。今回は、実際の崖を使います。
ロープを使った降下は2人とも無事成功。崖下に転落したけが人を救助する訓練では、張り出した岩を越えることができず、時間切れで打ち切られてしまいました。
仙台航空基地上席機動救難士榎木大輔隊長「できなかったことに対して、次はうまくやってやろうという気持ちは感じるがまだ努力が足りていない」

2人は、今後も訓練を重ね、10月には現場任務に就く予定です。
仙台航空基地機動救難士安発匠さん「基礎訓練、普段のレンジャー訓練やヘリレスキューの訓練を一つひとつ着実にこなしていって、今後どんどんどんどん知識を高めていって一人前と先輩に言われるような機動救難士になっていきたい」
仙台航空基地機動救難士宮島祥さん「どんな海難が発生しても迅速に要救助者を救い出せるような高度な技術を持った機動救難士になり、絶対に助けるぞという熱い気持ちを持った機動救難士になりたい」

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