7月3日、熱海土石流災害から1年が経ちます。土石流で失った住民の憩いの場を取り戻そうと活動し続けてきた人たちの今を見つめました。
静岡熱海市の逢初川沿いにある「逢初地蔵堂」です。およそ840年前、北条政子が病を患う長女の回復を願って作ったと伝えられている「逢初地蔵」が安置されていました。
この場所も2021年7月、土石流の被害を受けました。お堂の床は泥に覆われ、外も屋根の近くまで泥が飛び散り、引き戸やガラスは壊れました。
ここを再び、住民が集える場所にしようと森林保全の活動しているNPO法人「熱海キコリーズ」が建設会社などと協力し、2021年8月から復旧作業を続けています。
<復旧作業の様子>
「すごいじゃん。全然こっちのほうが効いてるもん」
<NPO法人 熱海キコリーズ 太田大翔さん>
(どういった作業をされてるんですか?)
「ここに新しく。柱が流されちゃったので、新しい柱を入れる前に、とりあえず仮で柱を入れています」
この日は、柱の設置や屋根の塗装、床に張る木材を整えたりしました。熱海キコリーズが復旧作業を始めたのは、土石流災害のあった地元のために何かしたいという想いからでした。
<NPO法人 熱海キコリーズ 渡辺昌宏さん>
「やっぱり伊豆山の方たち、コミュニティーの方たちが集うシンボル的なお堂と聞いていたので、みんなが集まれる場所を少しでも元に戻したい。その気持ちだけ」
<地元住民>
「こんなにきれいになるなんて想像もつかなかった。キコリーズさんのおかげで、こんなにもよくしてもらった」
地蔵堂は被災しましたが、奇跡的なこともありました。100年近く前に伊豆山に移され、それ以降、住民が代々毎月24日に手を合わせてきた「逢初地蔵」はほとんど無傷でした。
<NPO法人 熱海キコリーズ 能勢友歌代表>
「逢初地蔵堂の中にあったお地蔵さんがこちら2体になりますね」
逢初地蔵は、災害のあと、近くの公民館に移され、地元の住民によって大切に保管されています。
逢初地蔵が無事だったことで、毎月24日には法要を行うことができています。
<中田春子さん>
「最初の頃からずっと、亡くなった方のご供養をしていた。(行方不明の)太田さんも皆さん早く見つかるようにと思っている。ずっとお地蔵さんにもお願いしながらやってますけど…なかなかね。これからもどのくらい続けていけるかわからないけど、今いる人たちだけでもやれるだけやって、続けていこうと思う」
<NPO法人 熱海キコリーズ 能勢友歌代表>
「憩いの場は、地域の方々の士気が高まる、集いをすることで士気が高まる場所だと聞いているので、そういう風に災害前みたいに笑顔だったり、日常、そういう瞬間が戻ってくれると嬉しいと思う」
1年前の土石流によって失いかけた住民のよりどころは、再び伊豆山に取り戻されつつあります。