かつてボランティア活動のため日光市内の高齢者介護施設を訪れたウクライナ人のカテリーナ・ミリョーナさん(33)が、交流を続ける同市内在住の施設長松尾由記(まつおゆき)さん(58)に自作の俳句を寄せた。戦禍が続くウクライナ。砲弾が飛び交う現地で詠まれた句には、いらだちや悲しみなどさまざまな思いがにじむ。
ひまわりや 露(つゆ)に濡(ぬ)れたる 見捨てもの
ひまわりや 風に戦(そよ)ぎて 露(つゆ)の跡
今年3月、同市佐下部の高齢者介護施設「毎日クリスマス」の施設長である松尾さんの元に、チャット形式の交流サイト(SNS)を通じて俳句2句が届いた。「ひまわり」はウクライナの象徴で、露(つゆ)はロシアを表している。
「ロシアの侵攻に対する国際社会の動き。その鈍さに対するいらだち、戦火にのまれた国土を目の当たりにした悲しみを表現したのだろう」。松尾さんはそう解釈した。
カテリーナさんはウクライナ東部のドニプロで日本語を教えている。松尾さんとのやりとりは、ほとんどが日本語だ。俳句は松尾さんの名字と「松尾芭蕉(ばしょう)」を関連付けて生徒たちと考えたという。
2015年夏、国際ボランティアチームの一員として来日したカテリーナさんは、松尾さんが勤務する施設に2週間ほど滞在した。
交流は今も続き、ロシアの侵攻直後の2月26日には「ロシアが戦いをやめたら戦争がなくなる。ウクライナが戦いをやめたらウクライナがなくなる」と心境を語った。
ときには松尾さんと電話で話すこともある。「戦いたくないし、誰も悪にしたくない」。カテリーナさんはそう話したという。会話中、空襲警報が鳴ることもあった。避難先の劇場などから現況を伝えるメッセージが届くこともある。
「こちらの施設の様子とか、こちらからはなるべく楽しい話をするんです。カテリーナが暗くならないように」と松尾さん。カテリーナさんは現在、再来日のための準備を進めているという。松尾さんは「ほっとしている。ただ、いつどこに爆弾が落ちるか分からない。とにかく無事にいてほしい」と祈り続ける。