【奨学金を代わりに返済】地方企業や自治体で進む「奨学金返還支援」とは?

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奨学金返還支援は地方自治体や企業が奨学金を本人に代わって負担する制度

奨学金返還支援は、地方公共団体と企業が奨学金を本人に代わって返済する制度です。

もともとこの制度は、企業が社員に給与に返済分を上積みし、そこから奨学金を返済してもらう方法を採っていました。しかし、給与に返済のためのお金を上乗せすると所得税が増え、対象者の負担が増えます。また、奨学金を受け取っていない社員との間に不公平感も生じます。

図表1

出典:独立行政法人 日本学生支援機構 「企業の奨学金返還支援(代理返還)への対応」

そこで2021年4月より、図表1に示す仕組みによって、企業が奨学金を直接本人に代わって返済できる奨学金返還制度が利用できるようになりました。

返還支援導入には地方定住促進の狙いも

奨学金返還支援の広がりに目を向けますと、自治体では2021年11月時点で33府県487市町村、企業等では2022年5月時点で32の事業者が導入しています。

奨学金返還支援の推進には、返済に苦しむ若者を地方で受け入れることで地方への人口流入を増やし、産業の担い手を確保する狙いがあります。

地方公共団体であれば、域内での居住や就業状況が支援を受ける要件となるのが一般的です。

支援実績は13億円以上

奨学⾦返還支援制度の2020年までの支援総額は約13億5000万円に上ります。奨学金の返還支援制度を行った人数も増加傾向にあり、2021年度は過去最高の約7000人が利用。2020年度に比べて1000人超の増加幅となりました。

図表2

出典:内閣府地方創生推進事務局 「奨学金を活用した大学生等の地方定着の促進」より筆者が作成

一方、奨学金を利用した学生は2019年で45万4244人と、全体の1%に満たない水準にとどまります。

若者が地方に定着する呼び水となるかに注目

利用率の水準をみますと、現在の制度が若者に地方移住を促す上で、十分に魅力的な誘因策となっているとは言い切れません。政府の提言では、恒久的な財源の付与などによって奨学金制度を改善し、「地方公共団体や企業による奨学金の返還支援を推進する」と明記されています。

この国の未来を担う若者たちが、経済的な不安が原因で学業を諦めることを防ぐためにも、行政が今後どこまで実効的な施策を打ち出せるかに注目しましょう。

出典

独立行政法人 日本学生支援機構 企業の奨学金返還支援(代理返還)への対応
内閣官房まち・ひと・しごと創⽣本部事務局 地⽅公共団体における奨学⾦返還⽀援取組状況について(令和3年6⽉1⽇時点)
独立行政法人 日本学生支援機構 各企業の返還支援制度

執筆者 川辺 拓也
2級ファイナンシャルプランナー