7月10日投票の参院選は、全国の選挙区と比例代表に立候補した女性が過去最多の181人に上り、全候補者(545人)に占める割合も過去最高の33.2%となった。現職と新人の計5人が争う岡山選挙区(改選数1)も女性3人が立ち、人数、割合ともこれまでのトップタイ。街頭演説などでは「ジェンダー平等」「主婦目線」といった主張やフレーズを盛り込む候補がいれば、性別は殊更強調しないとする陣営もあり、スタンスはさまざまだ。
「子どもの未来を守りたい。一緒に日本の問題を考えて取り組もう」。諸派新人の高野由里子氏(46)は22日の岡山市内での第一声で「主婦」の立場を何度も強調し、こう訴えた。
共産党新人の住寄聡美氏(39)は26日、倉敷市内のスーパー前で「生涯1億円といわれる男女の賃金格差の解消などジェンダー平等の実現は待ったなしだ」と力を込めた。
これに対し、自民党現職の小野田紀美氏(39)は物価高騰対策や地方創生など幅広い訴えを展開。陣営幹部は「性別は特に意識しない。実績や能力で選んでもらいたい」とする。
全国5番目
世界各国の男女格差を測る「ジェンダー・ギャップ指数」で日本の政治分野の順位が低迷する中、今回の参院選では各党が積極的に女性候補を擁立した。「パリテ(男女議員同数化)を目指す」「女性候補者比率35%を実現」…。選挙公約に女性比率の目標を明示した党も多く、女性の候補者数は2019年の前回(104人)の1.7倍に急増した。
岡山県選管によると、岡山選挙区で女性が3人立候補したのは、男女別の資料が残る1971年以降では95年に並んで最多。女性比率の60%も同年と並び最高で、今回、全国の選挙区で高い方から5番目となった。
香川選挙区(改選数1)は立候補者8人中4人、広島選挙区(同2)は10人中3人が女性で、比率は香川(50%)が全国7番目、広島(30%)が22番目となっている。
問われる判断
岡山選挙区では少数派となった男性候補の陣営は、こうした状況をどう受け止めているのか。
無所属新人の黒田晋氏(58)の陣営幹部は「女性割合を一定程度増やす各党の姿勢は理解できる」としつつも「候補者として戦っている以上、主張や政策を訴えるだけだ」と語る。
岡山選挙区にはNHK党新人の山本貴平氏(47)も立候補している。
岡山県男女共同参画審議会の委員を務めるノートルダム清心女子大の山下美紀教授(ジェンダー論)は女性候補の増加について、多様性の観点から歓迎するとした上で「選挙においては性別は関係ない。候補者は社会の在り方をどう示せるかが重要であり、有権者には『女性だから』ではなく、政策や主張で判断する力が問われる」と話す。