横須賀の障害者就労事業にも食材高騰余波 7月からパン10円値上げ 開業以来初、「苦渋の決断」

手際よく作業が進むパン製造工場=横須賀市武の「元気パン」

 知的障害者らが働くパンの製造販売事業所「元気パン」(神奈川県横須賀市武1丁目)が7月1日から、大半の商品を一律10円引き上げる。新型コロナウイルス禍に続き、小麦粉をはじめとする食材の価格高騰が直撃し、開業以来初の値上げに踏み切った。客離れが心配されるが、「福祉を後退させないための苦渋の決断だった」と理解を求めている。 

 元気パンは社会福祉法人「清光会」(山田泰之理事長)が2011年、横須賀共済病院(同市米が浜通)内で製造販売を開始した。現在は本部の工場を中心にさまざまなパンを製造。本部や同病院内など4店舗で販売し、「安くておいしい」と評判を呼んでいる。

 今回値上げするのは菓子パン、総菜パン、食パンなど約60種類。人気の高いコッペパン類は据え置く。改定後は税抜きであんぱんが120円、オレンジワッサンは170円となる。

 山田理事長によると、小麦粉を原料とするパン生地が約20%値上げされるなどし、「調味料や食材などあらゆるものが上がっている。これ以上据え置くのは限界」と説明する。

 パン事業は「就労継続支援B型事業所」に位置付けられ、本部工場では20人近くの知的障害者が支援者と一緒に作業をこなし、工賃を得ている。中には一般企業に転職する人もいて、貴重な就労の機会になっているという。

 新型コロナの影響で一時は売り上げが4割ほど減少するなど厳しい運営が続く中、工場や店は休まず続けてきた。追い打ちをかけるような物価高騰だが、山田理事長は「魅力ある商品開発に努めながら、就労の場を何とか守っていきたい」と話している。

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