何ともいえない独特のスパイスの香りが立ちこめていた。棚にはハラル料理用の調味料が並び、壁飾りなどのインテリアはエスニック感満載。福井大文京キャンパス近くの通り沿いにある「ジャカルタ フード インドネシア」(福井県福井市)のドアを開けると、そこはもう東南アジアだった。
店主のコマラ・デヴィさん(45)がマスク越しでも分かる温かスマイルで出迎えてくれた。デヴィさんは結婚を機に約20年前にジャカルタから来福。4年前にオープンした同店では、一番人気で日本でもなじみ深いナシゴレンをはじめ、さまざまなインドネシア料理が味わえる。
中でもデヴィさんの一押しは、ルンダンと呼ばれる牛肉煮込みが主役のプレート料理。現地では家庭料理として親しまれているという。ご飯、タケノコのカレー煮、揚げタマゴ、スライスしたキュウリが一皿に盛り付けられ、見た目も楽しい。
ココナツやレモングラス、ウコンの葉などと約9時間煮込んだ牛肉は、食べ応え抜群で思いのほか優しい味わい。刺激が欲しくて添えてある青唐辛子を刻んだ調味料サンバルを付けて“味変”してみた。「か、辛っ」。涙が出るほど強烈。でもやみつきに。
お口直しに、とデヴィさんがすすめてくれたのが「焼きバナナ」。半分にカットしたバナナの両面をマーガリンでこんがり焼いて、コンデンスミルクとチョコレートソースをたっぷり振りかけた一品。鼻をかすめる甘い香りが食欲をそそり、熱々のバナナが口の中でとろけていく。
「インドネシア料理を求めて店を訪れる人たちが、自分の家のように過ごせる場所になれば」との思いで店を構えたデヴィさん。東南アジアからの留学生や技能実習生から「姉ちゃん」と慕われ、デヴィさんの温かい人柄に引かれて店に通う常連客も少なくない。
おいしい料理と元気、両方いただきました。
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世界のさまざまな料理を味わえる福井県内のお店を訪ねます。
教えて!秘伝レシピ
インドネシアの代表的な料理といえばナシゴレン。「ケチャップマニス」という独特の甘い調味料を使うと、ぐっと本格的な味になるのだとか。本場のナシゴレンの作り方を、デヴィさんに教えてもらった。