自賠責保険だけでは不十分なことも。電動キックボードは保険でどう備えればいい?

首都圏で見かけることが多くなった電動キックボード。手軽な移動手段ながら、排気ガスなども発生せず、環境に優しいことも相まって、急速に利用者が増えています。

2023年7月1日に道路交通法が改正され、16歳以上の年齢制限はありますが、免許証不要、ヘルメット着用の努力義務化、特定の条件下で歩道走行が可能になるなど、より利用しやすくなりました。

利用しやすくなるといっても電動キックボードも乗り物ですから、事故はつきものです。電動キックボードによる万一の事故に備えるための、加入すべき保険について解説していきます。


自賠責保険は義務化されている

「原動機付自転車(原付)を含むすべての自動車は、自動車損害賠償保障法に基づき、自賠責保険に加入しなければならない」と定められています。

一定の基準を満たす電動キックボードは新しく「特定小型原動機付自転車」といった車両区付の扱いとなりました。遊具や自転車のような感覚ですが、ナンバー登録が必要ですし、自賠責保険加入が義務付けられています。現在は運転免許証の携帯も必要です。未加入で運転した場合は1年以下の懲役または50万円以下の罰金。また、交通違反点数6点になり、免許停止処分となります。くれぐれも気を付けましょう。

ちなみに、自賠責保険は来年度より1台あたり最大150円値上げされる予定で、被害者支援などに充てられます。

自賠責保険の補償額

・治療費による損害(治療関係費、文書料、休業損害、慰謝料) 最高120万円まで
・後遺障害による損害(逸失利益、慰謝料等) 後遺障害の程度により1級3000万円~14級75万円まで
・死亡による損害(葬儀費、逸失利益、慰謝料) 最高3000万円まで
・死亡するまでの傷害による損害(治療関係費、文書料、休業損害、慰謝料) 最高120万円まで

以上のように定められています。自賠責保険は被害者救済の観点から加入が義務付けられている保険ですので、あくまでも相手に対する補償になっています。

自賠責保険だけで安心?

自動車に比べ、制限速度が低く抑えられているキックボードや原付は、それほど大きな事故にはならないと軽く考えるのは大間違いです。

制限速度は、車道走行時は時速20㎞、特定の標識がある場合、時速6kmモードの搭載がある車両では歩道の通行が可能です。しかし、自動車のように身体を守るものがないため、バイクの事故同様、車との接触事故では、けがのリスクが大変高くなります。また、二輪車という特性上、転倒の可能性もあります。自賠責保険は、自身のけがの補償はありませんので、それ以外で備える必要はあるでしょう。

キックボードは新しい乗り物のため、過去の事故データは豊富ではありませんが、自転車を例に挙げると、歩行者との接触事故で、後遺障害が残るようなけがをさせてしまった例は多くあります。賠償金額が9000万にも上る判例もあり、賠償に関しても自賠責保険だけでは、不十分といえます。

任意保険の入り方

自賠責保険の上乗せとして、民間の保険に入る時、どのような加入方法があるでしょうか?

自動車保険にすでに加入している方は、原付もキックボードもファミリーバイク特約という補償を追加することで、加入中の保険と同様の補償内容をつけることができます。

ファミリーバイク特約は1台ごとにいくらという概念ではありません。特約をつけることで、加入中の保険の被保険者(保険の対象になる人)が原付で起こした事故について、排気量の制限などはありますが、何台でも契約の車とみなして保険金を払うものです。2台所有していたら2台の原付やキックボード、さらに借用中のものも含むので、レンタル中のキックボードでも補償の対象となります。

首都圏で手軽に使われているレンタルキックボードには、多くの場合に保険がついています。相手に対する賠償に関しては無制限補償できる内容ですが、自身のけがに関しては、補償が手薄な場合も見受けられます。民間保険の特約をつければ補償の上乗せになるでしょう。

車社会の地方では自動車保険の加入率が高いですが、首都圏では車を持たない家庭も多く自動車保険に加入していないひともいます。その場合は、特約ではなく単独で原付の自動車保険に加入することも可能です。補償の内容によって違いますが、新規に加入の場合、月額3000円~6000円程で加入できます。ファミリーバイク特約との違いは、単独で加入する場合は、特定の原付、またはキックボードの補償に限定されるので、複数台を所有している場合それぞれに保険を付ける必要があります。

公道を走る時点でリスクは避けられません。上乗せ保険でもしものリスクに備えましょう。

人身傷害型と自損・無保険車傷害型、どちらを選ぶ?

保険の補償を決めるとき、「人身傷害型」と「自損・無保険車傷害型」のどちらかを選択することになります。

多くの自動車保険は、「人身傷害型」になっています。

「人身傷害型」とは自動車事故により自身・家族・乗車中のひとが死亡・けがをした場合に保険金を支払う特約です。けがの場合、1日いくらという定額ではなく、治療費の実費、休業損害、精神的な損害など保険金額を限度に支払われるものです。

「自損・無保険車傷害型」でのけがの場合、治療日数が4日以内の場合5000円、5日以上の場合、けがの部位や症状に応じて、5万円~50万円を支払うというような、定額払いをする内容です。自損・無保険車傷害型の場合は実費払いではないので実際かかった治療費を賄いきれない場合もあり、大きな損害を被った場合は、持ち出しが多くなるケースがあります。

バイクの利用頻度や使い方に合わせて、どちらか合う方を選びましょう。

手軽なだけに、無保険で乗ってしまっている方も多いキックボードや原付ですが、万一の時大きな負債を抱えないためにも、民間保険の加入も検討しましょう。

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