境界知能やうつ、ひきこもり...「救われない子ども」を描いた鈴木マサカズ作品

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精神科医療を必要としながら、適切な対応をとられていない子どもたちとその家族の実情を描いた『「子供を殺してください」という親たち』。
支援が必要なのに知的障害とみなされない、少年院の子どもたちのリアルを取り上げた『ケーキの切れない非行少年たち』。

鈴木マサカズさんがコミカライズを担当したこの2作はともに、必要な支援を受けることが出来ず、社会から厄介者扱いされる子どもたちを題材としたノンフィクション作品だ。

限界ギリギリの現場を描く

『「子供を殺してください」という親たち』は、「精神障害者移送サービス」を現場で行う押川剛さんのノンフィクションを原作として、精神疾患を抱える子どもとその家族を描く実録マンガだ。

押川さんの運営する「精神障害者移送サービス」とは、精神医療とのつながりを必要としながらも適切な対応がとられていない人たちを、強制的にではなく、対話・説得して「移送」するというもの。作中では、押川さんがサービスを行う中で直面した、病気の自覚がない精神疾患患者を医療につなげられない家族の現実、長引く「ひきこもり」問題など、私たちの身近でも起きている問題が取り上げられている。

家族や周囲の教育圧力に潰され、全裸でバットを振り回すようになったエリートの息子、酒に溺れて親に刃物を向ける男、母親を奴隷扱いし、ゴミに埋もれて生活する娘......。なぜそうした行動をとるに至ったのか、社会が彼らを追い詰めていく様子を可視化していく。

境界線上の子どもたち

一方、『ケーキの切れない非行少年たち』で描かれるのは、医療少年院と呼ばれる矯正施設に勤務する児童精神科医の宮口幸治さんの視点から見た、「反省以前の子ども」たちの姿だ。

少年院にいる凶悪犯罪に手を染めた非行少年たちの中には、「ケーキを切れない」子がいる。紙に描いた丸い円をケーキに見立て、「3人で食べるために平等に切ってください」と促しても、3等分することができない――。

社会は、少年院にいる子どもたちに対して、犯罪に対する反省や、真面目な社会生活を求める。だが、軽度の知的障害や「境界知能」に属する子どもたちに必要なのは「反省」よりも、社会生活をまっとうに過ごすための支援なのではないか。宮口さんの報告する子どもたちの姿は、そんな思いを読者に抱かせる。

「境界知能」とは、IQが71以上85未満で、社会生活を送るのに生きづらさを感じてはいるが、定義上「知的障害」には分類されない人々のことを指すという。こうした子どもたちの割合は全体の約14%にのぼる。つまり、ここで描かれる問題は35人のクラスなら5人いることになる。特異な例ではないのだ。

鈴木さんが描く子どもたちのうつろな目に、深い心の闇を感じる。

画像提供:新潮社

  • 書名:ケーキの切れない非行少年たち 1
  • 監修・編集・著者名: 鈴木マサカズ(イラスト)、宮口幸治(原著)
  • 出版社名: 新潮社
  • 出版年月日: 2020年12月15日
  • 定価: 682 円 (税込)
  • 判型・ページ数: B6判、192ページ
  • ISBN: 9784107723420

(BOOKウォッチ編集部)