過去最多「女性」候補4人 アピールに濃淡 集票への影響、判断分かれる 2022参院選長崎

激励を受ける女性候補(左手前)。長崎選挙区に立候補した6人のうち4人を女性が占めている=長崎市内(写真は一部加工)

 今回の参院選は国政選挙で初めて女性候補者が3割を超えた。長崎選挙区(改選数1)でも候補者6人のうち女性は過去最多の4人。ただ、性別が票に結び付くかどうかは判断が分かれ、本県の4人も「女性」のアピールに濃淡がある。
 「お母さんの声を政治に反映していきたい」。6月22日の公示日。日本維新の会の山田真美候補(50)はこう第一声を上げた。母親でもある山田氏は出産や子育てに優しい社会の推進などを訴える。3日後には、2児の母でもある同党の梅村みずほ参院議員と“ママ対談”をするなど「女性目線」を強調している。
 立憲民主の白川鮎美候補(42)は当初、自民現職の金子原二郎農相(78)との戦いを見据え、女性と世代交代を前面に押し出す方針だった。だが金子氏は引退を表明し、後継として山本啓介候補(47)が出馬。さらに他の女性3人と競うことになった。来崎した立民の泉健太代表は白川氏について「3年前からずっと活動してきた」と他の女性候補との区別を図り「男性が気付かない課題をまとめて声を国会に届けるのが役割」と持ち上げた。
 一方、共産の安江綾子候補(45)は「(訴えが)女性だけの問題」と取られかねないとして、あえて性別を前面に出していない。ただ、働く女性は非正規が多かったり出世が難しかったりして、男性との賃金格差があると指摘。「費用面からも女性の方が選挙に出るのは難しい。制度や社会を正す必要がある」と言う。
 政治団体「参政党」の尾方綾子候補(47)は「男か女かではなく人間として訴える」とのスタンス。その上で「女性の政治参画が少ない」という見方を疑問視する。「子育てなど身近な生活には女性が多く関わっており、むしろ女性の方が政治に興味があると思う。政治家にならなくても政治に参加はできる」と話す。
 本県で戦後誕生した女性の国会議員は4人。先駆者は、知事だった西岡竹次郎氏の妻ハル氏(故人)。1953年参院選全国区で当選した。次が旧社会党の「マドンナ旋風」が吹いた89年参院選で当選した篠﨑年子氏(故人)。2009年衆院選長崎2区で自民重鎮を退けた旧民主党の福田衣里子氏が続き、現職はハル氏の孫で国民民主の西岡秀子氏(58)=衆院長崎1区=だ。
 世界の男女格差を測る世界経済フォーラムの「ジェンダー・ギャップ指数2021」によると、日本は政治分野で156カ国中147位と低迷。そんな中、参院選で女性候補が増えたことについて、女性の人権や社会参画に詳しい長崎純心大の鈴木千鶴子客員教授は「男性中心の政治にない視点を求める空気が社会に醸成された結果ではないか」と分析。「ジェンダー平等を目指すことは誰にとっても優しい社会につながる。当選者には、多くの女性が立候補した意味合いをくみ取り政治に生かしてほしい」と求めた。
 長崎選挙区にはNHK党の大熊和人候補(52)も立候補している。


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